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「お墓の引越しとは?」事例をまじえて詳しく解説していきます。

最近よく聞くお墓のお引越し(改葬)。どういった方がお引越しをされているのか?費用は?手続きは?などについてわかりやすく解説します。

公開日:2020/2/12

更新日:2021/2/16

 近年お墓の引っ越しを考える人が増えています。厚生労働省の調査によると、お墓の引っ越しは2004年以前は、全国で年間7万件前後で推移していたのですが、2005年ごろから増加しはじめました。そして2018年には11万件を超えるお墓の改葬手続きが行われました。

実際に改葬手続きをした人が11万件であるとしたら、お墓のことで悩んだり、引っ越しを考えたりした人は、もっとずっと多いはずです。なぜそんなに大勢の方が、お墓の引っ越しを考えるようになったのでしょうか。

 

 実際に弊社ではこれまで大勢のお客様のお墓の引っ越しをお手伝いさせていただいております。その際には、このようなお話を伺いました。

 

「実家が県外にあるのですが、年に数回しかお参りに行けません。亡くなった父は、私の子供たちのことを本当にかわいがってくれていたので、もっと成長を見せてあげたいんです」

・「先祖代々のお墓があるところへは、在来線を乗り継いで、片道6時間以上かかってしまいます。お参りするだけで、時間も交通費も大変です」

・「今のお墓は山の上にあり、坂や段差が多く、高齢の母にとってはお参りするのも難しくなっています。お参りに行きたがっている母でも、もっと気軽にお参りできるような場所に、お墓を引っ越しさせたいんです」

・「現在のお寺の檀家から離れたくて、お墓の引っ越しを考えています。本堂の改修工事にいくら、庫裏の改修工事にいくら、と、これまでに何度も割り当て金を要請されてきました。これまでは母のことを思って、負担してきたのですが、母が亡くなったので、これを機会に離壇を考えています」

・「将来のことを考えて、永代供養にしたいと思っています。ところが、現在の霊園は永代供養ではないため、永代供養をお願いできる霊園に引っ越したいと考えています」

 

こういった声をたくさんいただいており、皆さまのお気持ちに近いご意見もあったのではないでしょうか。

 

伝統的なお墓の継承が難しくなった人にとって、お墓の引っ越しは現実的な解決方法のひとつです。本記事ではお墓の引っ越しと引っ越し手続き、宗派別の改葬手続きや関連する諸費用についてご説明します。遠く離れた実家のお墓、どうしようかと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

お墓の引越しとは?

お墓の引越しってどういう事?

「お墓の引っ越し」とは、ちょうど家を引っ越すように、お墓の場所を別の場所に移すことを指します。「お墓の引っ越し」に関連して、いくつかの言葉を耳にしたことがあるかもしれません。何かちがうのだろうか、と思われた方のために、少し言葉を整理しておきましょう。

 

改葬、移転、移設と「お墓の引っ越し」のちがい

お墓の引っ越しは、法的には「改葬」といいます。
1948年厚生省(現在の厚生労働省)が制定した「墓地、埋葬等に関する法律 」によると、
「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。
と定められています。役所での手続きは「改葬手続き」と呼ばれます。このように、法的な場や改まった場で「お墓の引っ越し」というときは「改葬」という言葉が使われます。

お墓の引っ越しと、「移転」や「移設」という言い方も、ほとんど同じことを指しています。「移転」という言葉は「場所や住所を移すこと」という意味があるので、「お墓の引っ越し先は…」という意味で、「お墓の移転先は」と言うこともできます。さらに「移設」という言葉は、引っ越しする前や後の施設に焦点を当てているので、「お墓の引っ越し先は〇〇霊園です」という意味で「お墓の移設先は〇〇霊園です」と言うこともできます。このように、「改葬」「移転」「移設」とさまざまな言い方がありますが、いずれも「お墓の引っ越し」という意味で、同じものです。

 

お墓の引越しと墓じまいの違いは?

近年、耳にする機会も増えた「墓じまい」という言葉があります。「店じまい」と同じように、そのお墓を終える、というイメージで使われています。実際には、お墓を「終えた」としても、そのお墓に祀られている遺骨を移す必要があるため、改葬手続きを行わなければならないのは、お墓の引っ越しと同じです。

ただ、手続きを行った後に、新たにお墓をつくることなく、手元供養したり、遺骨を散骨したりする場合は「墓じまい」であっても「お墓の引っ越し(改葬)」と呼ぶことはできません。しかし、新たにお墓を建てる人でも「ここの墓はもう『墓じまい』にする」と使うこともよくあります。

このように「お墓の引っ越し」と「墓じまい」が実質的に同じことを指していても、「お墓の引っ越し」が、お墓の今後のことに焦点を当てた言葉であるのに対し、「墓じまい」というのは、「先祖代々続いてきた今のお墓」に焦点を当てた言葉といえるでしょう。

歴史から見るお墓の引っ越し

お墓の引っ越しは、いつからあったの?

故人の気持ちと遺族を尊重した現代の「お墓の引っ越し」

いわゆるベビーブーム、1948年前後に生まれた人々が還暦を迎え、年間の死亡者数が100万人の大台を超えるようになったころから、日本人のお墓に関する考え方も少しずつ変わってきました。少子化によって、少なくなったきょうだいが、亡くなった人々のお墓を作り、維持していかなければならなくなって、お墓をめぐる考え方も、変わらざるを得なくなったのです。先祖代々のお墓を守る、という伝統的なものから、亡くなった人や遺族の考えを尊重し、その希望に合わせてつくるという考えが、主流になってきたのです。2005年ごろから増えてきた改葬件数の増加は、このような考え方の変化を表しているといえるでしょう。

最近になって耳にする機会が急に増えた印象のある「お墓の引っ越し」ですが、以前はどうだったのでしょうか。ここではお墓の引っ越しの歴史をたどってみましょう。

 

日本では古くからあった改葬

改葬の歴史は古く、火葬が一般的になる前の土葬の時代から行われていたことが、民俗学の研究によってわかっています。中世には南西諸島や紀伊半島、伊豆諸島などの地域では、ご遺体をいったん土葬し、お骨になったところで改めて埋葬しなおすという改葬の風習がありました。

奈良時代ごろから、身分の高い人々の間で火葬が広まるようになります。平安時代には、火葬は最も格式の高い葬儀のあり方として、上皇や天皇が亡くなると、荼毘に付されるようになりました。荼毘に付されたお骨は、いったんお墓に仮安置された後に、改葬されて正式に祀られたのです。京都北区にある香隆寺は、白河天皇や堀川天皇が荼毘に付された場所に「火葬塚」が残っています。

 

改葬を遺言とした徳川家康

時代が下って、遺言で改葬を命じた人もいます。徳川家康です。家康は「自分の臨終後は、久能(現在の久能山東照宮)に納めるように。一周忌を過ぎたら日光山に小堂を建て、そこに安置するように」と命じました。江戸幕府は遺言通り、日光に東照宮を建立し、一周忌に家康の改葬を行いました。その改葬の儀式は、遺骨は御輿に載せられ、行列の人々が舞い踊るという壮麗なもので、「日光山御祭礼行列絵巻」として今日にも伝わっています。

家康の子、秀忠以降 、徳川家の歴代将軍のうち6人、および将軍家に関連の深い人々は、徳川家の菩提寺である東京都港区芝にある増上寺に葬られています。しかし増上寺は、第二次世界大戦末期の東京大空襲で、大きな被害を受けました。戦後になって、増上寺が修復された際に、徳川家に連なる人々の墓所も修復され、遺骨も改葬されています。自分たちのお骨が「権現様(家康)」と同じように、時代を経て改葬されたことを知ったとしたら、おそらくあの世で驚いていることでしょう。

 

区画整理や用地買収のための改葬

戦後の高度経済成長に入ると、区画整理や高速道路などの用地買収によって、大規模なお墓の改葬があちこちで行われるようになりました。区画整理や用地買収の際には、事業者はあらかじめ代替墓地を定め、改葬することが義務付けられていたために、当事者の希望とは無関係に、改葬手続きを行った人も大勢現れるようになりました。

区画整理ではありませんが、墓地が移転せざるを得なくなって、自身のお墓の引っ越しが行われた偉人として、福沢諭吉 の名を挙げることができます。福沢諭吉は散歩のルートだった大崎の本願寺(現在の常光寺)からのながめを大変愛しており、宗派が異なるにも関わらず、本願寺に埋葬してくれるよう言い残しました。

ところが諭吉の死後76年を経た1977年のこと、常光寺の本堂建設のために、諭吉の墓は麻布善福寺に移転することになりました。改葬が実施された5月、掘り出された諭吉の遺骨は、ほとんど腐敗することもなく、ミイラの状態で現れたのです。あまりの状態の良さに、そのまま遺体保存を希望する声も多かったのですが、遺族はそれを望まず、荼毘に付された後に、善福寺に埋葬されました。

 

宗派による改葬の違い

日本人のほとんどは「仏教徒」に分類されていますが、私たちの多くが「仏教」を意識するのは、お葬式やお墓まいりの時だけでしょう。しかし、仏教の教義には葬儀や先祖供養の規定はありません。今日檀家制度は、江戸時代、キリシタン禁制のために幕府によって制定されたもので、仏教の教義とは別のものだからです。

そのため、宗派によって、お坊さんのお袈裟の色やお葬式の際に読むお経の種類、また戒名や数珠などに違いはあっても、「〇〇宗の改葬の決まり」「△△宗では改葬は認められない」といった宗派による改葬の定めや、宗派による差はありません。どの宗派であっても、お墓の引っ越しを決めたら、菩提寺に連絡して離壇手続きを行えば、離檀することができます。

しかし、寺院墓地から民間霊園に引っ越す場合には問題がないのですが、寺院墓地から他宗派の寺院墓地に引っ越す場合は注意が必要となってきます。その場合の注意点を見てみましょう。

 

寺院墓地から他宗派の寺院墓地に引っ越す場合は改宗が求められることも

現在、寺院墓地にお墓があり、そこから別の宗派の寺院墓地にお墓を引越す場合には、改宗を求められることがあります。というのも、墓地管理者であるお寺には、墓地使用者に対する宗教儀式を、お寺が属する教団の方式にのっとって行う「典礼権」があるからです。

改宗を求められれば、戒名も、移転先の宗派に従って付けなおすことになります。また、骨壺だけでなく、石碑も含め、すべて引っ越すことを検討している場合は、宗派によって刻まれる文字も異なっているので、彫り直しが必要です。

寺院の中には、「宗旨・宗派不問」としてお墓の引っ越しを受け付けてくれるところもありますが、異なる宗派寺院にお墓の引っ越しを考える場合は、ぜひ受け入れ先のお寺と相談してみてください。

 

お墓の引っ越しに適当な時期、避けた方が良い時期

離壇手続きをする場合は、お寺の忙しくない時期に

お墓の引っ越しに、決められた時期はありません。しかし、引っ越し先の選定や準備など、一定の時間がかかるものなので、なるべく早い時期に、現在の墓地管理者とは相談しておく必要があります。特に、現在、寺院境内にお墓がある場合は、早い段階で改葬の意思を伝えておかなければなりません。というのも、菩提寺にとって、これまでお墓の供養を続けてきた檀家が離れることは、寺院の支え手をひとつ失うことでもあるからです。

「寺院から法外な離壇料を請求された」というトラブルを耳にすることもありますが、この話し合いの過程でコミュニケーションがうまくいかなかったためだと推測されます。お墓の引っ越しの手続きには、現在の墓地管理者の署名捺印も必要なので、このようなトラブルにならないよう、誠意ある対応をしていくことが大切です。

そのため、話をするためには、お寺が忙しいお盆やお彼岸の時期は避けます。また浄土真宗の場合は、親鸞聖人の命日であり、報恩講が開催される11月後半も避けた方が良いでしょう。

また、閉眼法要(墓石から仏さまの魂を抜く儀式)をする際には、実際に墓石を動かし、遺骨を取り出すので、冬の寒い時期、特に雪が多かったり、地面が凍結したりする時期は、避けるようにします。

 

仏教とは無関係の六曜

一般に「お葬式は友引は避けた方が良い」といわれていますが、実は僧侶の方が気にされることはありません。というのも「友引」や「仏滅」などの「六曜」は、14世紀ごろに中国から渡ってきた占いの一種で、「仏滅」も当時は「物滅(あらゆるものが滅ぶという意味)」と書いており、まったく仏教とは無縁のものだからです。

そのため、閉眼法要や開眼法要の日程や、お寺へ相談に行く日などを決めるときに、六曜を気にする必要はありません。

 

 

お墓の引っ越し、手続きと流れ

では、いよいよここからお墓の引っ越しを行う際に、具体的に行わなければならない手続きを順番に、ご説明します。

 

埋葬の仕方を決める

最初に決めておかなければならないのが、引っ越し先のお墓をどうするか、埋葬法を考えます。
従来通りのお墓を、交通の利便性の良い場所の寺院墓地の中に建てるかどうか。
寺院墓地でも永代供養墓にするかどうか。永代供養墓というのは、寺院にある承継(子孫がお墓を継ぐこと)を前提としないお墓で、最初に永代供養をお願いしておけば、お寺が続く限り、ずっと供養を続けてくれます。
永代供養をお願いする場合でも、お墓を建てず、納骨堂に安置してもらう方法もあります。
また、お寺ではなく、郊外の民間霊園の中にお墓を建てるという方法もあります。
お墓を建てる代わりに、木の下に遺骨を祀る樹木葬という方法もあります。

現代は実にさまざまな埋葬法があります。お墓の引っ越しを考えるのであれば、まずどんな埋葬法にするのかをよく考え、実際にお寺や納骨堂、霊園に足を運び、管理者に話しを聞いて、納得のいくものを選んでください。

 

永代供養について詳しくはこちらからお願いします。

 

新しい墓地と墓所を決める

埋葬の仕方を決めたら、いよいよ移転先を決めなければなりません。引っ越す先の墓地と墓所を探す前に、ここで改めて「墓地」と「墓所」の意味の違いを押さえておきましょう。

 

墓地と墓所の違い

墓地と墓所は、法律で定められた違いがあります。
1948年に発布された「墓地、埋葬等に関する法律」で
「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可をうけた区域をいう。
と「区域」全体を指すことが定められています。
一方、「墓所」とは、「墓地」のように法律で明確に定められているわけではないのですが、墓地が駐車場や管理事務所などを含んだ区域全体を指すのに対して、墓所とは、お墓として使用される一区画を指します。

 

引っ越し先はどこにする?

引っ越し先として考えられるのは
①寺院墓地 ②公営墓地 ③民間霊園の3種類があります。
寺院墓地でも、従来のお墓を建てるところ、永代供養墓のあるところ、納骨堂のあるところなど、さまざまなところがあります。宗派が違っても受け入れてくれるところもありますが、改宗が必要なところもあります。
公営墓地は、寺院墓地、民間霊園に比べて費用を抑えることができますが、人気が高く、多くの場合、公募抽選制になっていて、入るのも大変だと言われています。
民間霊園の多くは、「宗旨宗派不問」とされていますが、宗旨とは、浄土宗、臨済宗といった仏教の各宗門を指す言葉です。また宗派とは、「浄土真宗本願寺派」「浄土真宗大谷派」のように、〇〇宗△△派という、同一宗内の各派を指します。そのため、キリスト教やイスラム教などの他宗教は認められない、というところもあるのです。親族にキリスト教徒がいて、その人も一緒のお墓に入ることを希望しているのであれば、「宗教自由」かどうかを確認してください。また、実際に何度か訪れ、話を聞いて、管理のしっかりしているところを選んでください。

 

何を引っ越すのかを決める

お墓の引っ越しには次の4種類があり、一口に「お墓の引っ越し」といっても、どのタイプかによってずいぶん手間が変わってきます。

 

①骨壺と墓石をすべて引っ越す

今ある墓石と骨壺をすべて移転先に引っ越し、撤去後は更地に戻し、墓地管理者に返還します。
引っ越し先は、場所によっては墓石の大きさに決まりがあったり、従来の墓石を持ち込めず、新規に作るしかないところもあるので、注意が必要です。また、先祖代々の骨壺がたくさん納骨しなければならない場合は、墓石の下の納骨室(カロート)の広さが十分あるかどうか、確認しておかなければなりません。

 

②骨壺だけをすべて引っ越す

最も多く行われている引っ越しの方法です。骨壺すべてを移転し、今ある墓石は撤去し、移転先に新しい墓石を設置します。既存の墓所は撤去後、更地に戻します。墓石ごと引っ越すのに比べ、輸送量を抑えることができ、引っ越し先の選択も広がります。ただし、埋蔵証明書が遺骨ごとに必要となります。

 

③骨壺ひとつだけを引っ越す

父のお骨だけ、配偶者のお骨だけ、というふうに、ひとつだけ骨壺を取り出して、改葬する方法です。この場合、今あるお墓はそのまま残しておきます。ただし、お墓によっては複数人の遺骨を一緒に埋葬しているところもあるので、そのような場所ではむずかしい方法です。

 

④遺骨の一部を引っ越す(分骨)

今あるお墓に埋葬されている骨壺を取り出し、分骨して分骨分を新しい墓所に改葬します。分骨する際には、現在の墓地管理者(菩提寺の場合は住職)に分骨証明書を発行してもらいます。分骨後、取り出した骨壺は、元に戻します。今あるお墓はそのまま残しておきます。

こうやって埋葬法と移転先、引っ越しの仕方が決まったら、いよいよ手続きに入ります。

 

 

法的な手続きを行う

現在の墓地のある役所から「改葬許可申請書」を取り寄せる

この改葬許可申請書は、自治体ごとに異なっているので、かならず今のお墓がある場所の自治体のものを取り寄せてください。遺骨一体につき、一枚ずつ申請する必要があります。
申請者の住所・氏名のほか、現在のお墓に入っている方の本籍、住所、火葬場、死亡年月日等の情報を書き込みます。

 

 

 

 

改葬許可申請書の「埋葬証明書欄」に記入してもらう

改葬許可申請書をすべて書き終えたところで、今のお墓の墓地管理者(寺院墓地であれば、菩提寺の住職)に提出し、所定の欄に署名・捺印してもらいます。

もし管理者が誰なのかわからないときはどうしたら良いのでしょうか?
埋葬証明書に署名捺印してもらわなければ、届け出ができなくなり、お墓の引っ越しもできなくなってしまいます。何とかして墓地管理者は探さなければなりません。

まず、寺院墓地の場合であれば、長年離れた場所に住んでおり、住職と面識がなくても、お墓がある場所のお寺が菩提寺なので、わからないということはありません。民間の霊園で、管理者を知らない場合でも、また霊園の所有者が代わってわからなくなったとしても、霊園の住所さえわかれば、地域の自治体に問い合わせて教えてもらえます。墓地管理者は、自治体への報告義務を負っているので、自治体がかならず掌握していることになっています。

しかし、管理のずさんな霊園の中には、管理者が代わったにもかかわらず、届け出がされていない場合もあります。そのような場合には、自治体も把握できていないかもしれません。その際は、古くからその地に住んでいる人や、地域のお寺、石材店などに問い合わせます。それでもわからない場合は、再度、自治体に相談してみてください。

また、「墓地、埋葬等に関する法律」ができる以前(1948年以前)は、集落共同体に古くからある管理者のいない墓地(みなし墓地)もありました。そのような墓地がそのまま残っている状態であれば、地域の自治会などで埋葬証明をもらうことができます。

 

受け入れ証明書(墓地使用許可証)を発行してもらう

新しく建てる墓所の管理者に受け入れ証明書(永代使用許可書・墓地使用許可証とも)を発行してもらいます。引っ越し先の寺院や霊園の管理事務所に行くと、受け入れ申請書の発行申請用紙が用意されているので、必要事項を記入して、発行を申請します。移設先の霊園名や住所を記入してもらいます。これも書式はさまざまですが、新しい管理者にお墓の引っ越しを依頼し、了承してもらえた段階で、受け入れ証明書を発行してもらうことができます。

また、ホームページを持っている寺院や霊園では、ホームページから必要書類をダウンロードできるところもあります。それをダウンロードして記入し、発行を申請することもできます。ダウンロードして必要事項を記入した申請書は、管理者のところへ持って行くか、郵送することも可能です。

 

改葬許可証を自治体に発行してもらう

「埋蔵証明書」「受け入れ証明書」を、今のお墓がある自治体に提出し、「改葬許可証」を発行してもらいます。窓口は、自治体によって「市民課」や「環境課」など異なるため、最初に窓口を問い合わせておいた方が良いでしょう。郵送でも可能ですが、その場合は免許証などの本人確認書類のコピーなどが必要です。郵便切手を貼った返信用封筒の同封を忘れないでください。約一週間で、許可証は発行されます。

 

遺骨が土葬の場合

古いお墓だと、土葬された遺骨が出てくることがあります。現代の私たちにとっては、火葬が当たり前なのですが、1950年代ごろまで日本人の約半分は、土葬によって埋葬されていました。

しかし、土葬の状態では改葬手続きを行うことはできません。「火葬許可証」の手続きをとる必要があります。また、土から掘り出した状態で荼毘に付すわけにはいかないため、火葬の前に洗骨の必要があります。このような作業は、専門的な知識も必要なので、お墓を開けるときにお願いする石材店の方に、併せてお願いすると良いでしょう。

 

 

お墓の解体から新しいお墓の設置まで

解体までの打ち合わせと準備

お墓の引越しをするまでに、菩提寺の住職としっかりと打ち合わせをしておきます。遺骨を取り出す際に、閉眼法要を行うためです。

また、実際に作業に当たってくれる石材店とも打ち合わせを行います。石材店は、今のお墓を開けてお骨を取り出し、さらに墓石を整理してくれるなど、実質的な作業に当たってくれます。石材店には墓所を更地にするための費用の見積もりを出してもらってください。

打ち合わせの際に、日程などを決めるだけでなく、発生する費用に関しても、よく話し合ってください。

 

解体の進行

ここからは、今あるお墓を墓じまいするまでの進行を見ていきます。

解体前の魂抜(たましいぬき)

遺骨を取り出すまでの段取りが決められているわけではないのですが、ひとつの区切りをつけるために、閉眼法要(魂抜き)が行われるところがほとんどです。

魂抜きとは、墓石から仏さまの魂を抜き、ただの石に戻す儀式です。また、浄土真宗では、閉眼法要を「遷仏法要(せんぶつほうよう)」と呼びます。

墓前で魂抜きの読経が僧侶によって行われたあと、焼香し供養します。それから石材店の方に墓石を動かしてもらい、遺骨を取り出します。

閉眼法要は、家族や親族でも関係の深い人だけで、少人数で行います。法要の際は、喪服である必要はありませんが、やはりひとつの区切りなので、暗い色のスーツなどのカジュアルではない服装が望ましいでしょう。

 

解体にかかる日数はどれくらい?

遺骨を取り出した後は、墓石は引っ越し先の墓所でも使用される場合以外は、解体され、撤去されます。また、墓石だけでなく、外枠などの付属品もすべて撤去されます。それから更地に戻して、墓地管理者に返還されます。墓石を処分してから更地にするまでの日数は、だいたい1~2日といわれています。

 

解体後のお骨はどうする?

お墓から遺骨を取り出すときは、かならず身元確認をしてください。墓石に故人の名前が刻まれているだけでなく、お寺の過去帳にも過去の人々が記載されています。古い遺骨の中には、誰のものかわからない遺骨が混ざっている場合もあります。最初に用意していたよりも多数の遺骨が出てきた場合、再度、その分の申請を行います。骨壺に何も書いてなかった場合でも「不詳」と記載して手続きを行うことができます。

お骨が多い場合は、それぞれの遺骨から集めて、一つにまとめて移すこともあります。取り出した骨壺は梱包し、自宅の仏壇に安置します。また、移転先の墓地に預かってもらうこともできます。

 

 

お墓の引っ越しにかかる費用を知ろう

改葬の費用は、引っ越し先の地域によって、また移動距離や何をどのように移すかによっても違いがあります。ですからここで表示するものは、あくまでも目安と考えてください。
■墓所を更地にする費用…1平米あたり8万円~15万円
■遺骨の取り出し費…遺骨1体あたり3万円
■引っ越し先のお墓の建立費(永代使用料込み)…約200万円
■閉眼法要のお布施…3~5万円
■離壇料…10~20万円
■引っ越し先のお墓での開眼供養…1~5万円
以上トータルで300万円程度と考えておけばよいでしょう。

 

 

最後に

少子高齢化が叫ばれて久しい現代の日本では、年間140万人の方が亡くなっています。地方では、今でも檀家として、菩提寺とのつきあいの深い家も多いのでしょうが、都会では檀家に入っていない、自分の家の宗旨宗派が何かもわからない家も少なくありません。

時代の変化とともに、人が死んだらお葬式をあげ、お墓に入り、1周忌、3回忌、7回忌…と法要を上げ、お彼岸・お盆にはお坊さんを呼ぶ…という流れが、まったくの過去のものになろうとしています。

反対に、従来の習慣や伝統よりも、個々人を大切にし、個々人の意思を尊重することが、葬儀やお墓でも大切なことだと考える人が増えてきました。それが決まりだから、みんながしていることをしないのは、世間体が悪いから、という理由ではなく、自分自身の最期のあり方を、自分らしく決めていく、ということは、理想であると同時に、難しいことでもあります。

永代供養墓や納骨堂、自然葬や樹木葬、近年では宇宙で散骨する宇宙葬というものまであるようです。今という時代の多様性が、そのまま埋葬にも表れているのでしょう。何よりも大切なのは、故人の気持ちを大切にし、遺された人々がもっとも望ましい形で、葬儀と埋葬を執り行うことだと思います。ここでご紹介したさまざまな情報が、みなさんの決断のお役に立つことを望んでやみません。

 

執筆者:株式会社西鶴 代表取締役 山本一郎

 

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