著名人との対談

VOL.46

岡島秀樹 氏×山本一郎

お墓は家族に会いに行く場

岡島秀樹 氏×山本一郎

対談相手のご紹介

岡島秀樹 氏×山本一郎

野球解説者

岡島 秀樹

hideki okajima

1975年生まれ、京都府出身。

京都、東山高校から1993年にドラフト3位で巨人軍に入団。投手、左投げ。
リリースの瞬間顔を下に向けて投げる独特のフォーム、ノールック投法が特徴。
巨人、日本ハム、ソフトバンクで日本一に貢献2007年にはMLBレッドソックスの一員としてワールドシリーズを制覇。(ワタナベエンターテインメント公式サイトより引用)

現在は野球解説者として活躍している。

対談の様子

山本:今回で46人目の対談になります。
初めて野球選手の方と対談させていただきます。
メジャーリーグでも大活躍された岡島秀樹さんです。
岡島さんの母校、京都の東山高校と言えば、私が中学生の頃、甲子園の一回戦で当たった早稲田実業との試合を見たことが印象に残っています。
当時、人気と実力を兼ね備えた荒木大輔さん率いる早稲田実業が勝利すると誰もが思っていました。
例えたら横綱と幕尻の取り組みみたいな試合でした。
生で観ていた私は驚いたんですが、早稲田実業が東山高校に敗けたんですよね。
それから東山高校の名を知ることになったんです。

 

岡島氏:それもう本当に有名な話ですよね。

 

山本:東山高校のベンチは優勝したみたいに盛り上がってましたよ。

 

岡島氏:荒木さんに打ち勝ったのは事は、自信にもなったと思いますね。大方の予想は早稲田実業が勝つと言われていたので優勝するくらいの喜びだったみたいですね。

 

山本:私は中学生の頃、宗教のことはわからなかったんですけど、浄土宗の学校がある事を知りました。
野球が強い学校はほとんど宗教が絡んでると思いました。PL学園も天理高校も智弁学園もみんなそうですよね。東山高校を選んだのは野球だけで行ったのですか?それとも岡島さんの家がお寺関係だったからですか?

 

岡島氏:まったく宗教的なことは考えてなかったですね。野球のために行こうと考えていたし、東山高校は京都ではモテる高校と言われてたんですよね。
僕の姉が家政高校という女子校に行ってたんですが、東東山高校はモテるよと言われてたんですよね。
その話を聞いて僕は野球しかやってなくてスポーツで行くしかなかったので、そこに行こうかなと思ってたんですけど、宗教系でというのは全然考えてなかったですね。

 

山本:学校の授業では浄土宗についてどんな事を教えてもらってましたか?

 

岡島氏:法然上人が生まれたきっかけや、昔から今に至るまでの歴史を勉強しました。
宗教というのはやっぱり難しいですよね。自分は歴史や宗教には疎かったので、宗教は奥がものすごく深いと感じました。
法然上人にしろ空海さんとかいろんな方がおられる中で、とても奥が深く、そこはやっぱり難しい分野と思いました。

 

山本:僕も宗教系の大学に行ってたんですけど、全く興味がなく、授業が苦痛でしたね。
こういう仕事をするとも思わなくて、逆に今している仕事は陰気な分野だと思っていたので嫌だったんです。後々考えたら宗教系の大学に行って良かったです。

 

岡島氏:東京に住んでいますけど、東京にも浄土宗系の学校があります。
うちの1番下の子供が年長さんなんですが、たまたま受けたところが同じ浄土系の学校だったので、いろんな歌だとか全部聞いたことがある歌なので懐かしいと思いましたね。
あとは母校出身の人がここにおられたとか、そういう意味では宗教高出身はやりやすい環境だと思いました。

 

山本:そこからドラフトで指名されて、新聞を賑やわせて、そしてジャイアンツに入ってニッポンハムに行って、レッドソックスに行きましたよね。
アメリカの文化と日本の文化の大きな違いと言ったらアメリカはキリスト教ですから、日曜日に必ず教会に行きますよね。異文化に触れて、どんな違いを感じましたか?

 

岡島氏:メンタル面がやっぱりすごく影響するんだなって思いましたね。日本でもメンタルが強い人が勝ち抜くんですけど、アメリカに行ってもやっぱりメンタルが大事だと思いました。
野球選手は試合があるので、毎日曜は教会には行けませんから、球場に牧師さんが来てくれます。
アメリカの文化は、宗教をすごく大事にされてるとあらためて思いましたね。
日本にもいろんな宗教がありますけどアメリカではメンタル的だと感じました。

 

山本:アメリカは、ほぼ一神教ですよね。

 

岡島氏:自分の生まれた日がクリスマスなんですよ。
ですから、イエス・キリストを身近に感じることがありますね。

 

山本:岡島さんがいた頃のレッドソックスはオルティスやラミレスがいて、凄く個性的な集団でしたよね。優勝もしましたしね。

 

岡島氏:2007年に入団した1年目に優勝しましたね。

 

山本:岡島さんのレッドソックス時代は、すごくのびのびと野球をやっておられて、凄く躍動感があったと感じましたが、何がそんなに違ったんですか?

 

岡島氏:やっぱり無我夢中でやれたのが一番良い結果に結びついたんじゃないかと思います。日本とアメリカの野球の違うところは、アメリカは個性のある団体なんですよ。
その個性を生かすことができれば成功するという感じです。個性のある集団の中で、僕の投げ方は特徴があり、下を向いて投げる投げ方だったんですけど、
アメリカではその個性が生かされたという事はありましたね。
日本だと、あの投げ方は良くないなとか言われ、子供が真似したら良くないとよく言われましたけど、結果を残せば何も言われなくなったんです。
そこで結果が出せなかったらダメとなるわけですよ。
でもアメリカでは結果が悪くても良くても個性の集まりの集団ですから、本当にやりやすい環境だなと、つくづく思いました。

 

山本:投げ方もありますけど、打者の打ち方も色々ありますよね?

 

岡島氏:ありますね。イチローさんの打ち方も個性があるじゃないですか。
野茂さんのトルネード投法も個性のある投げ方なので、個性派揃いのアメリカではやっていけるという事を確信しました。今の子供達にはそういう個性を大事にして欲しいなという風につくづく思いました。

 

山本:どちらかと言うと文化的にも日本っていうのは、個に対する意識っていうのは低く、やってもない経験に対してこうしろああしろと言う方が多いです。
アメリカという国は仰る通り、結果を出せば合格で、要するに自己責任だという感じですよね。
僕はメジャーリーグが好きなんで、岡島さんをアメリカで観ていたときは、毎日投げていて大丈夫かと心配しました。

 

岡島氏:試合数は日本よりも多いですからね。そこで大丈夫かというより、いけるとこまでいってしまえという気持ちでいました。
でも最終的にはチームがちゃんと考えてくれてましたね。
日本では昔だと130試合程度だったんですけど、それでも50試合、60試合くらい投げていたんですね。
メジャーになるとプラス30試合くらい増えるので、チームが逆算して考えてくれるんですよ。なおかつボストンレッドソックスというチームはプレーオフに毎年出ているチームなので、プレーオフに出るチームの試合数を逆算すれば、最終的にシーズン中は60試合くらい投げて、プレーオフで10試合投げてもらう計算でトータル70試合というプランなんです。
ポストシーズンのないチームであるとやっぱり、そのシーズン中で70試合投げて欲しいとなるわけですね。

後の1ヶ月はもう頭にないので、70試合をシーズン中に投げるとなるとやっぱりキツイんですよね。
だから逆算しながら9月になると登板間隔を長くしてもらったりとか、10月のポストシーズンに向けて調整をして、アメリカでは、そこはちゃんと体のことを考えてくれてるんだという風に思いましたね。
日本では昔はいけるとこまでいっちゃえ、怪我してもいいという感じだったんですけど、今はちゃんと選手の体の事を考えてくれてると思います。
アメリカでは先発ピッチャーにしろリリーフにしろ球数を考えて、ちゃんとプランがあるのですが、やっぱりそれでも怪我はします。1年間しっかり、
そのメンバーで戦い抜くという風にチームが考えてくれてましたね。

 

山本:あとの残りのプレーオフは3・4・4勝の、合計11勝しないといけないですよね?

 

岡島氏:去年は60試合だったのとプレーオフに出るチームが増えて、そこでまず2勝して、あと3勝、4勝、4勝という日本シリーズを2回やらないとワールドチャンピオンにはなれないというイメージです。
ワイルドカード上位の1位、2位になったらワンデイプレーオフみたいのがあるのでワイルドカード争いで戦うわけです。
そこから上がっていったチームと戦って3勝しなきゃだめで、そのあとは4勝して、ワールドシリーズでも4勝しないと優勝はできないです。期間は1ヶ月丸々かかるんですよね。

 

山本:チームを率いると、もちろん1位になりたいと思うでしょうが、やっぱり極限状態に近づいていきますよね?

 

岡島氏:なりますよね。同地区の松井さんがいたヤンキースに勝ったというのが大きかったです。
毎年いつもヤンキースに負けていたって聞いていたので、ミーティングでヤンキースに勝って東地区1位になれたことを誇りに思ってくれと、皆に言われてましたね。
日本と違うところは選手だけのミーティングをすごくやるんですよ。
日本だと試合の前と後に監督・コーチに呼ばれてみんなでミーティングをやるわけです。
メジャーリーグの場合は、監督・コーチ抜きで選手だけでミーティングをするんです。
あとは遠征とか行ったら選手たちと食事に行くんですけど、日本でやらないことをやってたんですね。
そういうことをやることによって、チームの和が生まれ、結束力が高くなるんです。
ヤンキースに勝ったという誇りを持って、プレーオフを戦う気持ちが強くなりますよね。
もしそこで負けかけても、そのことを思い出し、俺らは強いヤンキースに勝ったんだから、こんなところで負けてる場合じゃないという事を、主砲だったオルティスだとか、
その当時キャプテンのバリテックとかが言うんですよ。
ただマニーラミレスは言わないんですよ。俺はいいよ、お前ら頑張れという感じで、とても陽気でしたね。
オルティスだとかキャプテンのバリテックが中心となって、チームの結束力がありましたね。

 

山本:それは日本では考えられないですし、僕が誤解してたのは試合が終わったら皆さん、とっとと帰ってしまい、集合してもバラバラで試合だけやるイメージでした。そうではないんですね。

 

岡島氏:そうなんですよ。みんな帰る前にシャワー浴びて、ご飯食べるんです。家庭がある方はすぐ帰る人もいますすが、ミーティングしようという時はしますよね。 

 

山本:やっぱり日本の文化とアメリカの文化の違いかもしれませんよね。
会社でもよく言ってるんですけど、人は困らないと頑張らないので、いくら上の者が言っても改善しないんですけど、選手は勝たないと自分たちが困る事を知っているんでしょうね。
対して日本のプロ野球はどっちかというと監督が前に出て、コーチ陣が囲んだミーティングしかしていないイメージですよね。

 

岡島氏:そうですね。そういった日本のスタイルは古い習慣になってますけど、日本のプロ野球も今は変わってきてると思いますね。
強いチームは選手だけでもミーティングをするチームが多いですし、僕もソフトバンクにいた時は選手だけでもミーティングをやっていました。
強いチームは、ある程度、結束力はあると思いますね。
いろいろ選手同士で考えて、こうしなきゃダメ、ああしなきゃダメ、ということを話し皆でミーティングをするという事はやってましたね。

 

山本:日本の最初のキャリアはジャイアンツだったんですが、入団して良かったですか?

 

岡島氏:良かったですね。チャンスを貰えて、そこでしっかりやって。初めはそんなに良くなかったですけど、年齢を重ねるごとに良い結果が出たという感じですね。

 

山本:ジャイアンツは凄く面倒見が良いと良く聞くのですが、その辺のジャイアンツという球団はいかがでしたか?

 

岡島氏:高校生だと待遇がちょっとどうかなというのはありますけど、やっぱり大学、社会人、僕らの時は逆指名もありましたので、野球やってる時も辞めてからの面倒見も良かったと思います。
FAで他の球団からジャイアンツに絶対来てくださいということで来た方は、球団には残りやすくなると思いますけど。
文化面ではジャイアンツのしきたりを教えてもらいました。
特に挨拶、いろんな方が来られるのでそういう事をしっかり教えられましたね。
後は野球の技術的な面でいうと,やっぱり結果が全てですから、結果を残すために自分でできるだけトライしなきゃダメだという事も教えてもらいました。

 

山本:僕も会社に入社してくる子供たちに言ってるんですけど、プロ野球選手やプロのスポーツ選手だとすごく数字が出るからわかりやすいじゃないですか。
去年と今年で測れるじゃないですか。だけど普通に仕事をしてる人はプロ意識がなく、過去の話ばかりするんですよ。
10年前の俺は頑張ったんだって。今があかんかったら意味がないでしょと話しをしても、結局それはプロ意識が欠如していると思います。野球選手だと毎年毎年、1年契約で勝負ですからね。
数年前にすごい胴上げ選手になっても数年働かなかったら育成契約になり、厳しい査定をされますよね。

 

岡島氏:怪我しちゃったりとかすると、今は育成に回されることがありますよね。

 

山本:松井さんみたいにワールドシリーズでMVP取ったのにクビにするの?と思ったりしましたけど。凄くシビアな世界ですよね。

 

岡島氏:特にアメリカはシビアですね。僕も経験しましたけど、シーズン中にクビの人もいますし、キャンプ中にオープン戦で結果を残せなかったらクビになりますし、
契約残している監督さんでも、あなた要らないと言ってお金払ってクビにしますからね。
アメリカは本当に残酷だと思いましたけどそれが当たり前というか、結果を残さないのは自分が悪いんだっていう風に後々分かるんですが、やってる時はなんでって思うかもしれませんけどね。
それだけ期待されて入ったということもあって、期待を裏切ったらそれだけの見返りがあるんですよ。
結果を残せば、残しただけの見返りはあるけども、悪かった時の見返りも大きいです。
アメリカの方が、そういうのはシビアですよね。

 

山本:だから世界一になりたい人が集まるんでしょうね。

 

岡島氏:同じメンバーで毎年出来るかっていうと出来ないんですよ。
それがアメリカの野球ですよね。サイ・ヤング賞を取ったバウアーというピッチャーが、今年はドジャースに行きましたが、普通だったら残留してとかダルビッシュ投手も
カブスに残ってという風になると思うんです。
でも違うチームに行って戦うということは、これはもう日本とは違う本当に必要としてくれる球団に行くってのがアメリカではステータスなんです。
そこでチャンピオンになることを考えるんですよね。

 

山本:ジャイアンツの金字塔だった、9年続けて優勝するのは無理でしょうね。

 

岡島氏:難しいでしょうね。
特にアメリカは連覇するだけでも難しいですよ。

 

山本:メジャーリーグに行かれて、ジーターとかA・ロッドと対戦することを考えたら凄い名誉な事ですよね。

 

岡島氏:凄かったですね。バリー・ボンズとも対戦しましたし、日本にいたら対戦できなかったですけど、メジャーに行ったからこそ、そういう選手たちと対戦できたのは良かった事ですね。

 

山本:本当に凄いことだと思います。びっくりです。

僕らのやってるこの対談というのは、お墓参りとか、伝統文化の話を入れさせてもらっています。

新卒者の20代の子供達と、今日の話をさせてもらえれば、凄く役立ちます。
過酷な環境のアメリカで成功された経験は、多くの方が経験した事がないので、身近で聞かせていただけた事は大切にさせていただきます。
ところで、お墓参りとかって行ったりされてますか?

 

岡島氏:はい、行っていますね。行けてない時期もありましたが、普段はお墓参りに行っています。

 

山本:僕らの業界はお寺、葬式、もう仏壇は壊滅的な状況になっていると思うんです。
お墓もほぼ売れてなくて、墓離れもそうですけど、お参りしている人達としてない人達との違いを見ると孤独を感じたりしますね。
アメリカという国がなんで強くなっていったかというと一つは宗教があると思うのです。そういう事は大切だと思うのですが、どう思われますか?

 

岡島氏:難しいですね。
僕は46歳になるんですが、40代以上の方はお墓や先祖を大切にされていると思います。20代から下の人達の考え方はどうなんでしょうか。
そういう人達が自発的にやってくれないと変わらないと思います。
初詣は皆が行きますが、お墓参りは皆が行っているのかなと疑問に感じます。そういう事は、若い人達が考えを変えてくれない限りは難しいですよね。
僕が思うに若い人達は本当はお墓参りとか行きたいと思うんですよ。
でもそういうのってきっかけが必要でしょうね。
どういう時にお参りに行ったらいいのかとか、そういう事を発信してくれる人がいれば、お墓に足を運ぶ事自体、身近に感じると思います。
若い人たちもお墓参りに行くようになるんじゃないかなっていう風に僕は思いますね。
コロナで大変な時期には外出を控えていた人達も、コロナが落ち着いたらまたお墓参りに行くと思いますしね。
そのきっかけでしょうね。どういう風にしたら良いかの判断はできないと思いますし、僕らも若い時はそうだったと思うんですよ。
自分からお墓に行こうとした事は、あんまりなかったと思うんですよね。
例えば、何かきっかけがあれば行くようになりますね。
子供の頃、両親に連れて行かれたことがあったと思うんですけど、そのようなきっかけがあれば行くわけですよ。
若い人達もそうやって、誰かが教えてあげれば、ご先祖様を大切にすると思います。
そういう人達が増えてくれば、良い環境になると思います。
若い人達も考えてくれるんじゃないでしょうか。

 

 

山本:本日は貴重なお話を聴かせていただき、本当にありがとうございました。

 

岡島氏:こちらこそありがとうございました。