著名人との対談

VOL.28

小山内健 氏 × 山本一郎

バラは人を魅了する

小山内健 氏 × 山本一郎

対談場所:ハピネスパーク牧野霊園、管理棟2階テラス

DIGEST

バラの植栽を始めてからお客様が増えてきたように思います。

対談相手のご紹介

小山内健 氏 × 山本一郎

ローズソムリエ、バラの鑑定士

小山内 健(おさない けん)

ken osanai

バラの栽培、品種の鑑定などに携わる、大阪の枚方市にある京阪園芸のバラのスペシャリスト。ローズソムリエ、バラの鑑定士とも呼ばれている。NHK「趣味の園芸」バラ講師。テレビチャンピオン「全国バラの花通選手権」2回制覇。ローズセミナーや講演会、出版(「とっておきのバラづくり」)、執筆(雑誌「花ぐらし」連載)など各方面で活躍。

対談の様子

小山内氏:

管理棟2階テラスからの眺めがいいですね。(ハピネスパーク牧野霊園、管理棟2階テラスにて対談)

この地はいままで表の看板を見て知っていました。なかなか来る機会がなかったのですが、今回このような機会をいただけてうれしく思います。

 

山本:

ありがとうございます。
東京では、同業でバラ咲く霊園をしていらっしゃるところがあるのですが、1,000から2,000株のバラを植えられて、霊園でなくまさにバラ園といった感じです。

 

小山内氏:

それはすごいですね。バラはとげが引っ掛かったりするので、花が手元に見えなくても、遠巻きに見て、外郭のしまりをよくする、つる性のバラもいいと思います。こちらの霊園は風があるので、遠くにバラがあっても香りを運びます。それを楽しむ体感型のバラもいいかもしれません。

 

山本:

(ハピネスパーク牧野・交野霊園のパンフレットを見ながら)
交野霊園はこんな感じになります。このパンフレットが交野霊園の永代供養墓で、王妃プリンセスの名前を持つバラのある区画になります。

 

小山内氏:

あこがれの人たちの名前がついているのは非常にいいですね。こういう、空想意欲をくすぐるバラがあると、身構えずに入って行きたくなります。

 

山本:

こちらの写真が樹齢約160年のオリーブの樹で、このまわりに大地に還っていくよう筒状の紙の骨壺にお骨を納め、上部にお名前を刻んだ丸い石のプレートで埋葬する樹木葬になります。

 

小山内氏:

埋葬したお骨が土に還って、再びオリーブの息吹に取り込まれる。『還る』という、輪廻転生の話なのですね。
洋風な感じがいいですね。こちら牧野霊園もレイランディーの樹の上にアクセントとして伸長力のあるつるバラを置きましょう。レイランディーの緑の葉に、色相の違うピンクと白のバラの花を這わすだけでもイメージが全く変わると思います。白色は神聖色、優しいイメージはピンク色、元気を出させようとしたらオレンジ色、黄色のビタミンカラーで、バラの色に人はとても影響を受けると思います。こういう場所では、癒しとか神聖色のピンク色と白色が好まれると思います。

 

山本:

小山内さんは、バラのソムリエ鑑定士と呼ばれていらっしゃいますが、日本にどのくらいいらっしゃるのでしょうか?

 

小山内氏:

バラの鑑定だけをしている人は、まずいないと思います。私が入社した時、担当させていただいているひらかたパークのバラ園には、先代、先々代が明治時代から集めたバラがありました。ところが、当時すでにバラの名前がわからなくなっていました。なので、自分で海外の花の本を見て調べたりしました。ただ、私は植物が好きで、通常の管理をするかたわら興味深く調べていくうちに詳しくなり、現在に至っています。今ではバラの鑑定士、栽培士、育種家と多面的にとらえてソムリエと呼ばれるようになりました。

 

山本:

素晴らしいですね。
当霊園をオープンした当時はバラを植栽していませんでした。1年後にバラを植栽するようになったのですが、当初は周囲から大反対されました。バラにはとげがあり、育てにくい、後々の手入れを続けていくのは無理だと言われました。でも、少し手を入れて実際にやってみたらとてもきれいな花が咲き、バラの植栽を始めてからお客様が増えてきたように思います。

 

小山内氏:

バラが好きな人は、花がきれいに咲くことを楽しみにしていらっしゃいます。少し葉がなくてもあまり気にされません。少しお手入れをすると、元気になるのがバラです。20本中1本しか花が咲いていなくても、必ず人をそこまで足を運ばせ、見たり、香りをかぎたくなるような、人をひきつける魅力がバラにはあります。

 

 

山本:

ドイツ、スイスのお墓を見に行くと、まるでバラ園のようです。

 

小山内氏:

お墓に埋葬された方が、本当にバラを好きだったということで、お墓の横や後ろにバラがいっぱいある感じですよね。わたしもヨーロッパのお墓を見に、一度行ってみたいです。

アメリカになると、丘の上に墓標だけあって、墓標の字もかすれるくらいの年数がたっているのに、バラだけはきれいに花が咲いています。そのバラの名前がわからないので、どうするかというと墓標の人の名前をつけたと聞きます。こういうバラをセメタリーローズと言われ、バラとともに生きたという証で、それは素晴らしいことだと思います。

 

山本:

そのバラの花の名前は最終的にわからないのですか?

 

小山内氏:

なかにはバラの名前がわかるものもあるのですが、ほとんどはわかりません。その墓標の人の名前がバラについて、世界に流通しています。アメリカで見つかったバラのほとんどがセメタリーローズのようです。

 

山本:

やはりお墓にはバラなのですね。

 

小山内氏:

そうですね。そういうお墓は日当たりもよく、ある程度管理されているところがいいと言われています。バラ自身が自立心を持っているので、100年近く花が咲き、そのうち花の名前がわからなくなっているようです。周囲は草で荒れているのに花がきれいに咲いていて、お墓参りに来る人がその花のきれいさに感激されることにつながっているようです。

 

山本:

美しい話ですね。

 

小山内氏:

日本のある地方のお寺の横にあるお墓に、野バラが咲いているのを見たことはありますが、ほとんどそのようなお墓は見ないですね。わび、さびだけでなく、日本にもそういう華やかな雰囲気のお墓があってもいいと思います。昔の日本では、色を楽しむくつろぐということが少なかったのでしょうね。今はお亡くなりになるときも華やかに飾ってほしい方が多くなっているのではないでしょうか。

 

山本:

当社では、お墓にお花の彫刻をしたりするのですが、圧倒的にバラが多く、桜、ゆりなどが続いています。

 

小山内氏:

私も自分のお墓にバラの花の彫刻をお願いしたいですね。
またバラの花の色は変わりませんが、その周囲にある草木が、四季によって変わるので、それがまた新鮮に感じます。バラがあると周りが引き立ちます。

 

山本:

バラは色も素敵ですが、匂いもいいですね。
最近は、家庭だけでなく、施設でもバラをよく見ます。

 

小山内氏:

バラの花に癒されるということで、介護施設などではおいていらっしゃるところが増えてきています。車いすに乗られた年配の方が、手は自分であまり自由には動かせないけど、目と鼻でバラの花を楽しまれているというのはよく見かけます。

 

山本:

世の中にバラはどのくらいの種類があるのでしょうか。

 

小山内氏:

記録として残っているのは約3万です。ただ実際は、登録されている植物の3倍はあると言われていますから、約9万になるでしょうか。登録するにはお金がかかりますが、バラは比較的誰でも作ることができるので、登録はなくても販売されているようなことが多々あります。また、バラは繊細な気持ちを受け止めるのがうまい植物だと思います。そしてそれを受け止める人が、バラの育種家、作る人、つまりローズクリエーターだと思います。そういう人たちの見せたいバラが、時代とともに変化していき、今日のバラに至っていると思います。

 

山本:

わたしもこの10年で、いろいろなバラ園に行きました。ひらかたパークをはじめ、伊丹、倉敷、千葉のバラ園、海外ではパリのバガテルバラ園に行き、バラの見せ方をどういうようにしているのかという視点をもって見てきました。

 

小山内氏:

主要なバラ園に行かれていらっしゃいますね。
あと私がお勧めするするバラ園は、熱海のアカオローズガーデンと横浜のイングリッシュガーデンです。熱海のバラ園は、山の傾斜を上手く活用され、斜面にバラや草花を道に合わせて、リズム感のあるいろいろな種類の花を植栽されてします。横浜のバラ園は、バラを扱う日本中のガーデナーたちが注目しています。敷地はそんなに広くないのですが、植物通、バラ通の方が管理され、バラと同時期に咲く草花を展開されています。日本人だけでなく、外国からのお客さんも多く、新しいものを積極的に取り入れられていらっしゃいます。

 

山本:

ぜひ行ってみます。

 

小山内氏:

バラの花がメインでも、より美しくするのはバラでなく、他の草花です。例えばバラの花の色にないスカイブルーや紺色です。何種類も必要ということではなく、少しそういうものがあればいいと思います。
今日こちらにうかがわせていただいて、お話をしながら、いろいろなバラが頭の中に浮かび、想像がかなりふくらみました。奥の敷地に何もなかったら自然とそこまで人は足を運びませんので、そんな仕掛けを考えたいですね。日本でこのようなところが見られるとは思いませんでした。

 

山本:

墓石業界もお墓だけを扱う時代は終わったと思っています。お客様を楽しませる、自分たちも楽しむということをやっていきたいと思います。究極にはアルハンブラ宮殿のような霊園を造りたいです。

 

小山内氏:

お客様も来て楽しい、来るたびにいい意味で何かが変わっている、またお墓参りに行こうとなる、そういうことが必要なのかもしれませんね。

 

山本:

そういえば、他県の石材店が当社に見学に来られた時に、お墓参りにいらっしゃったお客様の滞在時間をストップウォッチで計測されていました。お客様がお墓参りに長い時間いらっしゃることに驚かれていらっしゃいました。いままであまり意識はしていなかったのですが、客観的に認識することができました。
また、この6月には初めてバラのお手入れ教室を牧野霊園で行います。また、お盆には霊園でコンサートを10年、他にも年間を通じていろいろなイベントをして、お客様に楽しんでいただこうと常に考えています。もっともっと変えていきたいですね。バラを含めて植物を融合させていきたいと思いますので、ご指導よろしくお願いいたします。