著名人との対談

VOL.19

小早祥一郎 氏 × 山本一郎

「気付きの感性」を養うために、掃除というのは、非常に良い訓練になるんです。

小早祥一郎 氏 × 山本一郎

DIGEST

霊園、墓地というのはただでさえちょっと陰気なイメージがあって、イメージが良くないわけで、そこで汚なかったり、怖かったりしていたら嫌ですよね。寄りたくないですよね。
そういう意味では、徹底して綺麗にするという事は、すごく価値を高めることになると思います。

対談相手のご紹介

小早祥一郎 氏 × 山本一郎

株式会社 そうじの力 代表取締役

小早祥一郎

shoichiro kohaya

1968年神戸市生まれ、少年時代をインドネシアで過ごす。
早稲田大学卒業後、日産自動車株式会社に入社。
制度改革のプロジェクトリーダー等を歴任するが、サラリーマン生活に嫌気がさし、退職。
紆余曲折を経て、“そうじ”には人を目覚めさせ、組織を活性化させる「力」があることに気づき、整理・整頓・清掃を通じた経営改革と人材育成を支援するコンサルティング会社“そうじの力”を設立。

全国各地で研修や現場指導、講演にあたっている。
月刊無料ニュースレター『そうじの力だより』は通算100号を越え、1,200人を超える。

合気道初段、柔道二段、ギター三流

対談の様子

山本:

今日、小早社長には弊社の牧野霊園と交野霊園を両方見ていただいて、環境整備をこれからしっかりとしないといけないと思いました。小早社長は、そうじの力という会社を創業し、日本全国を行脚されています。そもそも環境整備というのは、なぜ、やっていかないといけないんでしょうか?

 

小早氏:

そうですね。まず、第一に汚いより綺麗な方が良いというのが、当たり前の事ではあるんですが、我々の心を磨くというか、心を鍛えるというか、ただ、心って見えるものでは無いので、そして、取り出せるものでは無いので、鍛えるとか磨くっていうのも、難しいですよね。その時に自分の手足を使って、手足を動かして、手を汚して、汗を流すことで、物を磨くことを通じて、自分の心を磨いていくみたいなところがあると思うんです。
それで、色々説明はあるのですが、例えばごみが落ちていると、それを拾うか拾わないか?結構大きな境界がありまして、ほとんどの人は拾わないんですよね。ですけど、気付いて拾うと、それはそういう問題に気付いた人が自ら取り組む、別にそれを捨てた人が誰か、誰が悪いとかゆう話ではなくて、気付いた人間が動けば問題が解決するという事ですね。
そういう風に自発性をはぐくみ、自発性の高い人、志の高い人が集まると結果として、協調的な風土が社内に生まれると思いますね。
そういう風土を育てていくことが、後には掃除をして、隅々まで磨くことで、気付きの感度が上がってくるんですね。
よく、『気づけよ』とか言いますよね。『こんなことぐらい気付けよ』とか言いますけど、『気づけよ』と言われても、いや、どうして気付けばいいんですかね?と私は疑問に思うんです。
気付きの感性とは、どうして鍛えたらいいのか?そうしたとき、掃除というのは、実は非常に良い訓練になるんですね。
例えば、高い所にある埃に気付くとか、足下の埃に気付くとか、特に見えない所、隠れた所にあるゴミや汚れにあえて気付く、そういう気付く感性がいわゆる実務的な所の感性に繋がるはずなんです。
そうした関係性って、色んな意味が含まれてると思います。

 

山本:

『ゴミ』っていうのは美しさを護ると書きますが、護っていかないと駄目なんです。今日は交野霊園のトイレを見ていただいたんですが、『うわっ。こんなに汚れているんだ!』と。自分達では綺麗にしている方だと思っていたんですが、全然違っていたので、非常に勉強になりました。
社内で取り入れていくにあたって、やはり気付くっていうのは大切なことですね。

 

小早氏:

そうですね。
気付きの感度も当然、何段階もあるんだと思うのです。見て周ったところ、大体の所は綺麗にできていると思うんですよね。しかし、トイレにしても御社がこれで綺麗だろうと思っているレベルと、私が綺麗だというレベルは違いますから、そこで私が「ここは、汚れてますね」「こうすれば綺麗になりますよ」というような指摘をすることで、皆さんの「ああそうか!」という気付きになるんです。
また、1つ感度が上っていくというか、あると思うんです。
そういう意味では、私みたいな第三者が、必要な事だと思います。
どうしても自分達だけでは慣れてしまうんでしょうね。

 

山本:

見えない所を綺麗にしていかなきゃいけないと指摘を受けて、本当におっしゃられる通り、見える所を綺麗にして、見えない所は汚いというのは、二面性があるというのは、本当に直していかなきゃいけないと感じました。

 

小早氏:

よくありがちなのは、例えば飲食店で見える所、つまりお客様の座るスペースは綺麗にしていますが、厨房はもう、ギトギトドロドロで、びっくりしますね。
それは、どこかに経営者なり店長が、見える所だけやっておけば良いんだと思っているからだと思うんです。「見られなきゃいいや」やっぱり裏表につながると思うんです。
あるスーパーマーケットでも、売り場はまあまあ綺麗だったんですが、バックヤードはとにかく汚く、驚きました。
そいう社内風土が定着してしまうと、そのスーパーマーケットでも、バックヤードが汚い!そこでタバコを吸い、ポイ捨てしている。お客さんにだけ見られなかったら、何をしても良いという風土が成り立ってくると思うんです。
やっぱそういう裏表をなくすというのは、凄く大事な事で、見えない所までしっかり綺麗にするという事を通して、間違いなく気持ちの面での裏表を完全に無くす事は無理かもしれないでが、無くなっていくはずです。

 

山本:

私達も食事に行き、汚いトイレを見ると、もう2度と行きたくなくなるんです。やはり気付かないと、「これぐらい良いや」という考え方が風土になりますね。

 

小早氏:

ですから私もこういう商売柄、『えっ!そんな所も指摘するの?』という指摘をするんですよ。でも、全て繋がっていると、飲食店も味さえよければ良いだろうということになります。そんな店のトイレは、当たり前の事ですが、細部にわたって綺麗にするという事で、本当にお客さんに良いものを提供しよう!お客さんに本当に喜んで貰おう!どこまでという、制限範囲はないと思います。当たり前ですよね!お客さんに来て頂くわけで、そのお客さんがちょっと見ただけで埃があると、気を悪くされます。だから、何処までも限りなくやっても、本当に細部までやることが、段々と進んでいき、掃除が面白くなっていき、楽しくなっていくはずなんです。
あれ?こんな所までピカピカですね?そうでしょう!そんな関係性が生まれますよね。
なんとなくゲーム感覚で、こんな所まで実は、磨いてるんです。掃除しているんです。
徹底すればするほど、実は面白くなるんです。楽しく掃除できるんです。私はこの活動は、楽しくなければいけないと思います。

 

山本:

そうですね。作業をしてはダメですよね。綺麗にしろと言われたから、するのではなくて。

 

小早氏:

人は、楽しくなければ続かないですよ。やれと指示され、やらされ感覚だと作業になってしまいますね。
掃除を徹底することにより、楽しくなって、盛り上がっていき、当然、その場も明るくなりますし、コミュニケーションも良くなりますし、チームとしての力もつきますね。

 

山本:

そうですね。
今、社内で環境整備ももちろんですが、作業をするなと言っています。言われたから動く、たぶん続かないですし、している方も面白くないから、周りからも褒められることはないんです。楽しくするから、周りからも、凄く綺麗になった!と褒められるんですね。また、やりがいが出てくるんですよね。

 

小早氏:

特に御社の場合は、やっぱりお客様と接する時にお客様を喜ばせようと、常にハッピーにさせようというのを重視していらっしゃると思うんです。
例えば、文房具を整理整頓するにしても、「ここまでやっているんです」、社員さんの間で良い競い合いが出来、「ここ見て下さい。ここほら~みたいな」そういう風土になってくれると、お客様と接する時も、そのまま接することができますね。

 

山本:

だから、いらないものは捨てるという事は、なかなかできないですが、捨ててみたらあの時捨てたもの欲しかったなという事は、意外と無いですね。
大事に残している古い物って、ずっと今も大事にしている。中途半端なものがたくさんあふれている。

 

小早氏:

良いものを大事に使っていく、その代わりどうでもいい物は使わない。だから、まずは捨てる。捨てきった後は、ちょっと使って悪くなるものを入手しない。増やさない。だんだん物を捨てていき、物を少ない状態にすれば、物を増やす事が嫌になりますね。

 

山本:

そうですね。
宮殿とかヨーロッパの歴史的建造物に行くと、物がないんですね。ただ、良い物が置かれていたり、日本のお寺も、広い部屋に掛軸だけポツンとあるのが情緒だったりします。

 

小早氏:

日本というのは、昔から清潔だと言われていて、幕末の時期から明治初期にかけて、来た外国人が、日本は本当に清潔な国だ。しかし非常に貧しい、日本人というのは物質的には貧しいが、民、百姓の家まで見ても非常に清潔だ。という記述があります。その1つには物が少ないという事があったと思います。

 

山本:

やはり物がなくとも、きっちりしてやっていくという文化をもっているんですね。神は細部に宿ると言われていて、きっちりしていかないといけない。
今日の時代、いろんなことの細かい事を言われる時代になっているんですが、それは正しいと思います。僕らの業界はお墓、霊園っていうのは、まだまだ発展途上にあって、皆さん汚く怖いと言われ、それがお墓を買わない理由の1つになっています。
環境整備が整っていないというのは、実は統計的に2番目ぐらいになっています。立地が悪いというのが1番目で、2番目に環境整備になっています。そこにお墓の金額うんぬんは意外と無いんですね。
今のお墓離れの原因というのは、場所が悪い所にお墓があって、やっぱりそこを見ても環境整備が出来ていないというのが建立しない理由の1つになっています。

 

小早氏:

霊園、墓地というのはただでさえちょっと陰気なイメージがあって、イメージが良くないわけで、そこで汚なかったり、怖かったりしていたら嫌ですよね。寄りたくないですよね。
そういう意味では、徹底して綺麗にするという事は、すごく価値を高めることになると思います。

 

山本:

私を含めてスタッフさんも、お客様から「他の霊園、墓地と比べてハピネスパークの霊園は、綺麗ですね」って言っていただいて、そこで胡坐をかいて満足している所があるんです。そこは改善していかないと、汚くなるのは明日からでもすぐになってしまうじゃないですか。
綺麗にする事は、繰り返し、繰り返し、ルーチンワークというのは難しいです。そこをチャレンジしていきたいですね。
お墓というのは、我々の仕事もそうなんですが、たえず環境整備していくには、楽しくしていくというのが原則なんです。
それ以外に、ここは気を付けた方がいいという事は何かありますか?

 

小早氏:

やり方で言えば、時間をきっちり決めて、やるという事が大切です。
いろんな職種、業種によって少し違いますが、空いた時間にやるというのも良いんです。ただ人間って時間が余った時にやれば良いというと、結局しないんです。やっぱり、時間が余ったらではなく、時間をちゃんと決めて、この日のこの時間は環境整備しかしないということを決めて実践すると良いですね。

 

山本:

例えば、1日だったらまずは環境整備を今日はやって、夕方より会議するとかでもいいですね。

 

小早氏:

毎日の中で、例えば朝の10分や15分は掃除にしっかりあてるとか、きっちり決めてやられると良いです。

 

山本:

本当に綺麗にしていたら、周りの人が喜んでくれるので、ますます頑張って綺麗にしていきます。今後ともご指導の程、宜しくお願いします。

 

小早氏:

こちらこそありがとうございました。