著名人との対談

VOL.15

西畠清順 氏 × 山本一郎

喜ぶ人がいるだろうと発想した人が、心が豊かであると思います。

西畠清順 氏 × 山本一郎

対談場所:株式会社花字 事務所

DIGEST

時代がどうであれ、私は植物のことしかできないので、それをやっているのに過ぎないのですが、頑張って自然を豊かにしていきたいですね。木々が生き生きして、花が咲いて、人が喜ぶ、そんな空間を作りたいです。またそんな霊園があったらいいですね。

対談相手のご紹介

西畠清順 氏 × 山本一郎

株式会社 花宇 5代目

西畠清順

seijun nishihata

1980年生まれ。
明治元年より150年続く、花と植木の卸問屋「株式会社 花宇」の5代目。
日本全国・世界数十カ国を旅し、収集・生産している植物は数千種類。日々集める植物素材で、いけばな・フラワーデザイン・室内緑化・ランドスケープなど国内はもとより海外からのプロジェクトも含め年間2000件を超える案件に応えている。
「情熱大陸」、「世界一受けたい授業」等、メディアにも多数出演。2012年1月 ひとの心に植物を植える活動である、“そら植物園”をスタート。様々な個人・企業・団体と植物を使ったプロジェクトを多数進行中。
(hanau.jp 清順サイトより引用)

対談の様子

山本:

清順さんの家業である、株式会社花宇さんは、この植木業界で長く仕事をしていらっしゃいますが、今の業態となったのはいつ頃からですか。

 

清順氏:

花宇の初代は、はっきりとした記録は会社には残っていませんが、話しを聞くところによると、大阪までリアカーを引いて、花や野菜の苗を仕入れて、こちらの地元で売っていたそうです。二代目は、花の開花調整を世界で初めておこないました。冬場に桜を切り出し、温室で咲かせて、桜の花を待っている方に届けていました。つまり、植物を待っている人に、植物を届けることが次第に専門になってきました。三代目、四代目は、生け花の家元や特別なお客様に、流通にのっていない植物を提供するようになりました。また、四代目は、海外からの植物を取り扱うようになり、そして今の業態があるという感じです。

 

山本:

現在のような植物を扱うようになられたきっかけは何かありますか。

 

清順氏:

当社では、伝統ある和菓子屋さんのように、何百年変わらない味を引き継いでやっているわけではなくて、その時代に合わせて必要とされていることをやっています。時代に沿って自然と変化してきた感じです。今は、FAXやパソコンさえあれば、花を手にすることができる時代です。そのような時代のなかで、自分ができることは何かと考えたときに、流通にのってない木や、植物のありのままの形に興味を持つようになりました。

 

山本:

このたび、弊社のハピネスパーク交野霊園にも樹齢150年のオリーブの樹などの植物を植えていただいたのですが、霊園に植樹したい!この話を初めに聞かれてどのように思われましたか。

 

清順氏:

稀にみる興奮を覚えました。木は人によって運ばれ、場所と出会います。今回はご縁があって、山本さんと出会い、このハピネスパークとオリーブが出合うことができました。僕も、今までいろいろなお仕事をしてきましたが、まさか霊園に木を届けることは想像していなくて、大変面白かったです。

 

山本:

この5月から、当園で樹木葬をやっていきたいと考えていますが、それについてはどのように思われますか。

 

清順氏:

本当に豊かな話だと思いました。木と一緒に眠りたいという気持ち自体に、豊かさを感じます。そういう時代になるだろうとか、そういうことを喜ぶ人がいるだろうと発想した人も、心が豊かであると思います。先祖のために立派な石のお墓を建てられる人もあるでしょうし、これからは木と一緒に眠りたいという人も出てくると思います。すばらしいことだと思っています。

 

山本:

樹齢200年から300年というと、私たちより長生きをしている大先輩なので、それをずっとつなげていくことが、これからの使命だと思っています。

 

清順氏:

有り難いですね。

 

山本:

これからどんな木を提供していきたいと考えていらっしゃるのですか。

 

清順氏:

ご縁のあった人に、その人や場所にふさわしいものを届けていきたいと思っています。こんな植物が好きで、こういう木を育てていこうという自分の思いもありますが、プロとして誰かに頼まれて、その人にふさわしく、その人の想像している以上のものを提供していきたいです。

 

山本:

清順さんはプラントハンターと呼ばれていらっしゃいますが、日本ではほとんど聞いたことがないのですが、その歴史を教えていただけたらと思います。

 

清順氏:

元々プラントハンターという言葉は、200年から300年前のイギリスで生まれました。当時の王族や貴族は、いい家に住んで、いい家具をそろえて、毎日おいしいものを食べて、誰かに音楽を演奏してもらい、豊かな暮らしを求めていました。そんな人が最後にいきついたのが誰も持っていない美しい花が咲いているような庭を持ちたいという願いでした。その誰も見たこともない花を採りに行く職業の人、それが「プラントハンター」と呼ばれ、活躍していました。ですからプラントハンターは、伝統ある職業ということになります。私の場合は、王族や貴族だけでなく、現代のいろいろなシーンにあわせて、それに応えるように植物を入手し提供しています。危険な植物を追い求めるのがプラントハンターというイメージがあると思うのですが、その時代に必要とされている植物を手に入れる職業だと思います。きちんとした定義も資格もないですが、僕は植物収集家であり植物卸問屋であり、そういう意味でプラントハンターと呼んでも間違いはないのかなと思っています。

 

山本:

プラントハンターという言葉は、王族や貴族が庭を欲していたという話に由来しているということでしたが、弊社ではお墓の石だけを販売して、植物や緑がそこにあったというのが当たり前と思われることが大事なことかもしれませんね。

 

清順氏:

これからの時代、人がもっと技術的な思考になることが重要になってくると思っています。産業革命が起きて、その後、工業社会から流通の時代が来て、今では情報社会になっています。これからは、いかに有機的な考え方ができるかというところが必要になってくると思います。木や自然などの本当のよさを理解することが大切ですね。

 

山本:

弊社では、社員が植物をいいなと思っていて、一種の企業文化のような感じになっています。

 

清順氏:

社員全員がそう思っていることがすばらしいですね。よくあるのが、社長がよさをわかっていて、従業員がそのよさをわかっていなくて、その温度差が激しいところもありますが、西鶴さんの場合は、社員みんなが植物を好きなのがうれしいです。

 

山本:

ありがとうございます。次に霊園を作るときには、必ず清順さんとプロジェクトをしていきたいと思っているのでよろしくお願いします。
これからどのような仕事をされる予定なのですか。

 

清順氏:

いろいろあります。
そのなかのひとつですが、これから桜の時期なので、大きな桜を3月、4月にショッピングモールで咲かせる企画を考えています。

 

山本:

いろいろな方と一緒になって取り組まれていることが斬新ですばらしいですね。

 

清順氏:

いまの時代に、ちょうど植物が合ったのかなと思います。感度のするどい人が、植物に惹かれているという気がしています。時代がどうであれ、私は植物のことしかできないので、それをやっているのに過ぎないのですが、頑張って自然を豊かにしていきたいですね。木々が生き生きして、花が咲いて、人が喜ぶ、そんな空間を作りたいです。またそんな霊園があったらいいですね。山本さんが、お墓の業界で新しい文化を切り開かれていくような気がするので、話を聞いてワクワクしています。

 

山本:

今日はお忙しいところありがとうございました。これからもよろしくお願いします。