著名人との対談

VOL.13

舞の海秀平 氏 × 山本一郎

ひとつの区切りをつけて、出発するという意味がお墓にはあると思います。

舞の海秀平 氏 × 山本一郎

対談場所:舞の海カンパニー

DIGEST

お墓がお寺の敷地内にあって、盆にはいろいろな人がお墓参りに来て、
子供の頃はお寺がお祭りみたいに賑わっていて、とても楽しかったです。
東京に出て来ても8月13日になるとその頃のことを思い出し、気持ちが静かになります。お墓に行って手を合わして、
先祖に思いをはせると、亡くなった祖父母のことを思い出しますね。

対談相手のご紹介

舞の海秀平 氏 × 山本一郎

元大相撲力士

舞の海秀平

shuhei mainoumi

青森県西津軽郡出身で出羽海部屋所属の元大相撲力士、関取時代は、平成の牛若丸・技のデパートとのニックネームで親しまれた。中学校、高等学校、日本大学経済学部でいずれも相撲部に所属し活躍。
高校教員採用試験に合格していたが、大学在学時の後輩の急死を契機として一転大相撲入りを志す。
現在は有限会社 舞の海カンパニー所属のスポーツキャスター、タレント、CM、NHK大相撲解説者などで活躍中。

対談の様子

山本:

相撲や伝統についての考えを聞かせていただいてよろしいでしょうか。

 

舞の海氏:

この500年から1000年の間に、日本の伝統、文化芸能が無くなっている中で、相撲は奇跡的に残っていると感じています。相撲は土俵上での勝ち負けではなく、神事ですから神様に対して奉納する気持ちが作法の中にしっかりとあらわれ、残されていると思います。
アマチュア時代には神事という感覚は全くありませんでしたが、大相撲の世界に入ってから勝負だけではないことがわかってきました。
それは各部屋のけいこ場の土俵を年3回くらい、いったん壊して平らにしてから、新しい俵を埋めて作り直します。
その後いきなり相撲をとるのではなく、 土俵の中央にいろいろなしずめものをして、行司による伝統にのっとった土俵祭が終わってからでないと稽古ができません。
単なるスポーツではなく、長い伝統に培われ、かなり奥深いものがあるのを感じました。

 

山本:

今の子供達は相撲の伝統や宗教的なことについて何も知らずに相撲界に入ってくる訳ですよね。
そういう子供達にどのように指導をされていますか。

 

舞の海氏:

私も現役の時には、力士としては勝たなければいけないので目先の勝負にもこだわっていましたが、
今は精神的、宗教的なことを粘り強く指導していかなければならないと思っています。
特に昭和30年代から昭和40年代の相撲の取り組みの映像を見ますと、土俵上での力士の作法やしぐさが控えめで、神様に対してひれ伏すような気持ちが伝わってきます。
また力士が勝ち名乗りを受けるとき、「手刀を切る」作法があります。これは、懸賞のかかった取り組みに勝った力士が、
行司が軍配に載せて差し出す懸賞を受けるとき、 五本の指を一直線に伸ばした片方の手を軍配の前で左右に振る作法のことです。
この作法は、軍配に向かって左・右・中の順に手刀を切ります。左が神産巣日神(かみむすびのかみ)、 右が高御産巣日神(たかみむすびのかみ)、中が天御中主神(あまのみなかぬしのかみ) の五穀の守り三神に感謝する礼儀とされています。

 

山本:

相撲を通じて他にどんなことを学ばれましたか。

 

舞の海氏:

「勝っておごらず、負けてひがまず」と師匠からよく言われました。
勝って自分は喜びたいだろうけど、負けて悔しい思いの相手の気持ちを気遣い、負けた時には相手のせいにするのでなく、すべては自分の責任で負けを認めるということでした。

 

山本:

ズバリ大相撲の魅力とはどんなことですか。

 

舞の海氏:

子供の頃から相撲が好きで、本場所が来るとテレビにくぎづけでしたね。
多くの人が相撲をスポーツという感覚で見られているので、塩をまいている時間が退屈といろいろな方がよく言われます。
相撲というのは土俵上でぶつかり合う力士の姿を見るだけでなく、次の取り組みの合間に間があり、
その雰囲気や空間全体を楽しむように作られているところに先輩方の知恵があり、相撲界の魅力や味わいがあると思います。
相撲界だけでなく日本人が育て上げてきたものだと思うのです。
相撲は日本が発祥と思っている方もいらっしゃるのですが、実は外国から入ってきて、大陸を通り朝鮮半島等を渡って日本に入ってきていまして、ヨーローッパやアジアの世界各地に相撲が広がっていますが、ここまで神事として、興業として華やかに発展してきたのは日本だけではないでしょうか。
ただ角界に入門してくる日本の若者の数も年々少なくなってきていますし、外国人力士に頼らざるおえない状況までになってきています。
相撲界も外国人力士を受け入れたり、時代の流れやグローバル化に対応していかなければならないのでしょう。

 

山本:

私達のお墓の業界も時代の流れで伝統が無くなったり、供養のあり方が変化したりしきていますが、
お墓の伝統や供養について、どう思われていますか。

 

舞の海氏:

子供の頃は、盆だけでなく父と夜中に墓参りについて行っていましたね。

 

山本:

夜中ですか?怖くなかったですか?

 

舞の海氏:

さすがに夜中は怖かったですね。

 

山本:

舞の海さんの家では、お墓参りは結構行かれていたのですか?

 

舞の海氏:

お墓がお寺の敷地内にあって、盆にはいろいろな人がお墓参りに来て、子供の頃はお寺がお祭りみたいに賑わっていて、とても楽しかったです。
東京に出て来ても8月13日になるとその頃のことを思い出し、気持ちが静かになります。お墓に行って手を合わして、先祖に思いをはせると、亡くなった祖父母のことを思い出しますね。

 

山本:

最近はお墓を建てずに、木の下にお骨を埋める樹木葬や宇宙に散骨するといった、変わった埋葬などがあるのですが、お墓に対してどのような考えをお持ちですか。

 

舞の海氏:

誰にも言わずに焼いて海に散骨して欲しいと言っています。家族には反対されますけどね。

 

山本:

なぜそう思われるのですか?

 

舞の海氏:

残った家族に申し訳なく、迷惑をかけたくないからですね。
だからお墓はいらないと思っていたのですが、先日、妻の母親が亡くなりまして、私はお墓を何とかしなければいけないとも思っています。
実は毎年親戚や知り合いのお墓参りや、お世話になった方の家を訪ねて仏様に線香をあげ手を合わしています。そうすると心が本当に静まり、優しくなりますよね。

 

山本:

手を合わせることは、お墓や仏壇の前や、食事の時くらいですよね。

 

舞の海氏:

毎年1月1日には部屋の力士全員で、親方のお墓の掃除をしてお参りをします。
それから元旦式というのを行なうのですが、毎年同じことをするというのは、ひとつの区切りをつけて出発するという意味があると思うのです。
立ち止まって何かを考えるという意味合いが、お墓にはあるのではないでしょうか。

 

山本:

とてもいいお話を聞かせていただきました。本日はお忙しいところありがとうございました。