VOL.1
荒木元悦先生 × 山本一郎
「お客様と仏さんのことを一番に考えています。」
DIGEST
伝統や文化、習慣や慣習、あるいは四季の移ろいなど、日本人は古(いにしえ)より多くの先人たちに学び、現代に力強く生きています。
しかしともすれば古い慣習に縛られたり、伝統や文化の風趣に浸る心のゆとりを失ったりしがちなのも事実です。
弊社、山本は常日頃より宗教人や会社経営者、評論家、文化人、タレントなど幅広い人脈を持ち交流を深めています。またこれらの人々との対話を「いにしえの対談」として企画し、定期的に行っております。
本誌に掲載の荒木元悦師との「いにしえの対談」は、その一事例です。荒木先生は京都金閣寺、銀閣寺を塔頭寺院に持つ臨済宗相国寺派の庶務部長を務められ、京都仏教会の常務理事でもおられます。
山本との対談では宗教人としての立場から忌憚のない意見を述べていただきました。
対談相手のご紹介
大本山相國寺塔頭 光源院 住職
荒木元悦
genetsu araki
臨済宗相國寺派 庶務部長
京都仏教会 常務理事
近畿宗教連盟 理事長
京都府宗教連盟 委員会
臨済宗相國寺派 元宗務総長
大本山相國寺塔頭 光源院 住職
銀閣寺 元執事長
対談の様子
山本:
当社は大阪で「ハピネスパーク牧野霊園」と「ハピネスパーク交野霊園」の二つの霊園を中心に寺院や公営霊園で墓石を販売していますが、今日は宗教人としての立場からご意見を伺えればと思います。
荒木先生:
パンフレットを見て大変きれいな霊園なので、ビックリしてます。
まるで極楽浄土ですな(笑)。これからのお墓はこういう公園のような環境も大事かもしれません。お墓は仏さんとの縁やさかい、お参りが多い方がええです。
山本:
お彼岸やお盆だけではなく、「ちょっとお花を見に」とか、「散歩がてらに立ち寄った」とか、とにかくお参りが多いです。
荒木先生:
京都の石屋さんも一生懸命ご用聞きしてはりますけどね。こういう時代だから自粛というか、節約というのが多いと思うんですよね。
石屋さんもお寺さんに一件のところもあれば、4~5件入っているところもある。
お寺さんとのお付き合い関係によって、たくさん注文をもらえるところとそうでないところがある。
山本:
いわゆるお寺さんに出入りの指定石材店さんですね。
荒木先生:
中には建てたら建てっぱなしで、ほったらかして出ていかれる。そういう石屋さんは安くしているので、そこまで面倒みられないのかもね。
「何かありませんか? ちょっと見て回りますわ」と言って、ゴミでもたまってたら、ちゃんと片付けて持って帰ってくれるところもありますね。
山本:
石屋にとって一番大事なところですね。当社では毎年一回は全てのお墓を点検(寺院墓地も)し、掃除して写真を送ってあげてます。
荒木先生:
それはいいことですね。仏さんも喜ぶし、縁者もええ気分になるし、おたくも商売やろけど、いい事をしたという清々しい気持ちで、益々精が出ますね。
山本:
お墓を販売させていただいてる私らにとっては当然の事と考えております。
荒木先生:
社長さんクラスのトップがよく動くところと、2番手3番手に任しているところがありますね。
我々もそうなんですけど、坊さんでも住職が動いてお参りにいくのと、副住職なり小僧がいくのとではやっぱりちがいますからね。トップが足をせっせと運ぶことで親密な関係が生まれ、次の御用を承けることに繋がりますな。
山本:
ところで、最近は病院から火葬場に直行する直葬が増えてますね。お坊さんもお経もなしです。
東京など都市部では約30%と言われるほどです。
荒木先生:
私の知ってる葬儀社の社長さんも嘆いてはるんです。「家族葬ならまだ良いと思わなあかんけど。この頃は直葬だといって、宅配便と一緒やな、というぐらい家へ帰らなくて病院からそのまま連れていくとかね」。「火葬したところでそれをお墓に持っていかずに、それを空中分解みたいにしちゃうとかね」。仏さんをどう見ても大事に扱ってると思えませんな。
山本:
納骨堂も増えてきてます。子どもさんが少なくなってきて、ましてや娘さんが一人とか、結婚しない女性も増えてますし。
荒木先生:
本来やっぱり、子どもさんが一人であっても、その方が健在の間はお墓参りをして、親の骨をちゃんと拾ってあげないかんと思うんですけどね。
「もうええねん。親もそう言うてたから」みたいな感じで、そういう形に収めてしまうことはよくありますね。だから当然、世の中がよくなるはずがないんですよ、と私は思うんですけど。
あくまでも、ご先祖さんを敬って、はじめて今日の自分があるわけですから。三世十方にそれぞれの三界万霊塔なり供養し、ちゃんとお寺さんはお寺さんでしてるんですけどね。
山本:
ますますお墓を建てる人が少なくなるのは、寂しいですね。
荒木先生:
お墓は高いからできないのは間違いで、仮納めしておいて一年目に建てればいいし、二年目と言ったってもう三回忌ですからね。都合つけばお彼岸とかお盆に近場の石屋さんに頼むとか、そういう方法もあるんですけどね。
自分ができる時にご先祖さんのために供養してあげることが、今後のつながりに非常に大事なことなんですね。そういう供養もせずにほったらかしているようでは、本人さんも浮かばれないし、仏さんはもちろんのことです。お仏壇にお膳をあげたり、仏さんを供養してあげるということは、自分も気持ちよく仕事や勤めに出られますよ。
山本:
ほんとに仏さんは大事に供養しなければいけませんね。
荒木先生:
法事で、おもてなすと言う心は、それは生きている人だけではなく、仏さんがあって、それにあやかって皆がお呼ばれし、おもてなしを受けるわけですから。その中心が仏さんですから、きっちりとお祀りして上げて、功徳あるお経をいただくというのが、本来の姿です。
山本:
それを怠るということは先々が思いやられるというか、後悔が残るでしょうね。
荒木先生:
供養をちゃんとする人は、仏さんじゃなくても他の事でも心配りがあるわけです。会社の中でも外とのおつき合いでも…。
常々の人間の性分もありますけど、やはり親が子に引き継ぐものはきちっと引き継いで、そしてその中に無駄なものがあれば、それはそれで無駄を省いて現代のあり方に改めていけばいいと思います。
山本:
おっしゃる通りだと思います。本日はどうも貴重なご意見をありがとうございました。