著名人との対談

VOL.62

森泉氏×山本一郎

ペットの死は悲しまない。30種以上の動物たちと接して感じる思い

森泉氏×山本一郎

対談相手のご紹介

森泉氏×山本一郎

ファッションモデル・タレント

森泉

izumi mori

1982年10月18日生まれ、東京都港区出身。ファッションモデル、タレントとして活躍。株式会社ウォークゼロに所属。

2002年、19歳でモデルデビュー。日本ファッションエディターズクラブ主宰の第48回 FCEモデル・オブ・ザ・イヤーを受賞したカリスマモデルとして、パリ・コレクションに出演。

芸能界きっての動物好き、私生活では多くの動物を飼っている。さらに、動物を題材に扱った番組に多く出演している。

また、幼い頃から得意科目が図工で、現在も東急ハンズに毎日通うほど日曜大工に傾倒している。2010年には、自ら幾度も不動産屋に足を運んでペットを飼育するための物件を探し、千葉県南房総に格安の別荘を購入した。やや老朽化の目立つ物件で外観も中身もボロボロであったが、週末を利用してほとんど1人でリフォームを行った。数々のバラエティ番組でも、DIYの腕を披露している。ユンボの運転免許を取得している。

対談の様子

山本:森泉さんといえば、森英恵さんを祖母に持つご家庭に生まれ、私たちにはとても厳格なご家庭で育ったのではないかとイメージしてしまいます。実際にどんな環境でお育ちになられたのですか。
森氏:私は5人兄妹の上が2人の兄、3番目の長女として生まれたのですが、父はとても厳しい人で、一度始めたことは最後までやり遂げなさいという人です。小さい頃から合気道を習わされて、黒帯を取ったらやめてもいいと言われて、寒稽古のときは寒いなか裸足で稽古をしていました。

父にはポケットに手を入れるなとか、箸の上げ下げまで本当に細かいことにまで注意されましたが、そんな父がある日、我が家のルールとしてエレベーターを使ってはダメだと言ったんですね。私の家は4階にあって、毎朝学校に行くとき、家に帰るときも兄妹全員が階段を使うということになったんです。私はたまに誰もいないときを見計らってエレベーターを使うことがあったんですが、そういうときにかぎって父が帰ってきて鉢合わせになる(笑)。

どうも父は自分のことをサムライだと思っていて、それはもう厳格な父親です。ただ、私は2人の兄のあとに生まれた女の子だったということで、それでも甘いほうです。長男が一番大変だったと思いますよ。

 母のほうはというと、父とはまったく正反対でとても優しく、逆にそのバランスがよかったのかなと思います。母はとにかく明るい人で、愚痴や他人の悪口を聞いたことがありません。私がちょっと嫌なことがあって母に話していると、なんだかどうでもいいなという感じにさせてくれるんです。そんな不思議なパワーを持っている人です。

母は小さな幸せを大切にしていて、「今日もすごくいい天気だったね」と言って、家族をハッピーにしてくれるような温かい存在です。また、母はよく「私たちは健康で元気でいられてよかったね」ということも言ったりするのですが、私も小さな幸せを声に出して言うのはとても大事なことだと感じていて、小さなことでも感謝の気持ちを言葉にして言うように心がけています。


山本:泉さんの明るさの原点はお母さまにあるんですね。ご両親が真逆のようなご家庭ですが、厳しさと優しさが両方あるご家庭というのは、実はとてもバランスが取れていると思います。泉さんがとくにお母さまの影響を受けたと感じるようなことはありますか。
森氏:母の影響で一番大きいのはDIYですね。いまではDIY(注:「自分自身でやる」“Do It Yourself.”の略)なんて言いますけれど、母が普通に家のDIYをしていました。海外ですと自分の家は自分で修繕したり、壁の色をペンキで塗り替えたりしますから、母もそういうことが当たり前に根づいていたのだと思います。

 ある朝、うちの家の白い壁がオレンジ色になっていたんですよ。なんと母が夜に自分で壁を塗り替えていたんです。びっくりして聞くと、なんか汚れていたし、飽きたからオレンジに塗ったと涼しい顔をして言うんです。こんなことはけっこうありましたね。

私が自分の部屋に天蓋(注:ベッドなどの上部に取り付けられる装飾的な覆い)がほしいと母に言うと、どういう天蓋にするか布屋さんに行って布選びをして、取り付けに必要な材料は東急ハンズ(注:現在はハンズ)へ行って母と一緒に天蓋をつくったりしました。そんな思い出をいまでも鮮明に覚えています。
山本:泉さんのDIYは何と言ってもテレビ番組(注:日本テレビ『幸せ!ボンビーガール』)で家を建ててしまったことですよね。小さい頃から東急ハンズに通うくらい図工が得意だとうかがっていましたが、まさかこのときから本格的なDIYをしていたんですね。


森氏:これはもう母の影響ですね。ただ、自分でつくったものというのは愛着もあるし、大事に使うようになりますよね。こういったことを身近に感じるようになったのはよかったですね。

そして、まさに“Do It Yourself.”の精神を培ったのは私の高校時代です。アメリカのニューヨークから200キロ以上北にあるバーモント州にあるアート系の高校に留学したのですが、この学校は本当に面白いところで、自分たちの学校は自分たちで直すという日があっったんです。何もわからずに、いきなりインパクトドライバーを渡されて学校を修繕しましたから。もう使い方を教わるだとか講習を受けるだとかなんてなし。さすが自由の国だけあって、いきなり実地で覚えるというような学校でした。

 ほかにも野菜を栽培して育てて自分たちで食べるのはもちろん、学校内には牧場もあって牛のお世話をしながらミルクもいただいていました。豚も小さいうちから育てます。大きくなっていなくなってしまったと思ったら、冷蔵庫を開けると豚がぶら下がっていて、あれはかなりショッキングでした。とにかく、自給自足の生活をしていましたので、とても視野が広がる学校でした。

 またアート系の学校だけあって、ほかの学校にはあまりない、たとえばエッチング(注:金属板の腐敗作用を利用して溝をつくり、そこにインクを詰めて刷り出す版画技法)やブラックスミス(注:黒い金属を扱い職人の世界観を表現したアート)を使ったものなどもありました。学校では生徒が興味のあることは全部チャレンジしてみて、そこから自分が得意なことや好きなことに注力するスタイルでした。


山本:日本ですと1+1=2と教える教育ですが、海外ですと2になるにはどんな式が考えられるかということを教えますよね。それは無限で、8-6=2でも正解ですし、2×1=2でもいい。型にはめない教育というのはすごくいいですよね。自給自足的な生活とモノづくりという生きる原点を体験してきた泉さんの人生に、もう1つ欠かせないのが動物ではないかと思います。芸能界一の動物好きでいらっしゃる泉さんですが、人生のなかにどのようにして動物という存在が関わってきたのですか。

森氏:実は小さい頃から家でたくさんの動物を飼っていたんですよ。ウサギやハムスター、モルモットという小動物系と、母が爬虫類が大好きでトカゲとかイグアナもいました。小学生のときにはイグアナを連れて行ったくらい好きだったんですよ。

 母はとても優しい人だと言いましたが、たとえばハムスターを家に連れて来たときに、この子にとって一番過ごしやすい環境って何だろうねと一緒に考えて、ハムスターはもともとどんな環境にいて、どうやって生活しているのか、それに近い環境をつくってあげようとするようになったんです。

こうした考え方は「エンリッチメント」というのですが、最近では動物園でも取り入れられている考え方です。エンリッチメントには、「空間・採食・社会・認知・感覚」という5つの分野があって、たとえば、空間エンリッチメントなら登る場所、隠れ場所、水場など行動特性に合った空間をつくります。社会エンリッチメントなら群れの行動や飼い主との交流を通じて社会性を刺激します。こうした考え方は、小さい頃から動物を飼ってきて自然と身についたものですね。

ですから、たくさんの動物と暮らすなかで、その子たちにとって一番いい環境をつくってあげようとすることがとても楽しいんです。


山本:泉さんがユーチューブで開設している「森泉のIZOOMI Channel」を拝見しましたが30種類以上の動物が紹介されています。とくにアルダブラオオガメ、ロシアリクガメ、レオパードゲッコー、サバンナモニター、オニオオハシ、スッポンモドキなど私も知らない動物もたくさんいて驚きました。こんな動物飼えるの?というのが正直な感想ですよ。
森氏:もうそれぞれ違うから楽しいんですよ。動物たちに過ごしやすい環境をつくるのにすごいエネルギーをかけたけど失敗に終わることもたくさんあります。たとえば、ベニコンゴウインコのキキとファイヤーをつがいで飼っていますが、この鳥ちゃんのためにつくったものが秒で壊されたりするんですよ。もう破壊王。でも、それがとても楽しい時間でもあるんです。

私にとってはつくるプロセスが楽しんでしょうね。結局、鳥たちのためと言いながら自分のためで。ただ、自然のなかで生活していた動物たちの命を預かっている身として、私はできるだけ自然に近い環境で生活させてあげたいと思っています。だから、どうしたらもっと環境がよくなるだろうと常に思っていて、満足することはないですね。そういう意味では、終わりがないから楽しいのだと思います。

 最近ではSNSで海外でもどういう環境で飼われているか動画で配信されていたりします。それを参考に、ちょっとでも近づけようとか、こうしたらいいんだといったことも勉強になります。

うちにはナマケモノもいるんですが、緑がいっぱいのほうがいい、湿度も高いほうが生きやすいということで、ナマケモノの部屋は、いまは湿度を70%くらいにしています。
山本:緑がいっぱいで湿度70%というと、もうほぼシャングルですね。そこまでして動物のことを考えて育てているのには感服です。動物たちも幸せですね。そこで1つ泉さんにお聞きしたいのは、幸せな動物たちもやはりいつかは死を迎えます。とくに動物は人間よりも早く亡くなるほうが多いので、死に直面することも多いと思うのですが。
森氏:先に旅立たれるとたしかに悲しいですが、私はあえて悲しまないことにしています。というのは、動物たちが生きている間にやれるだけのことはやったという思いがあるからです。ペットロスで悲しみに暮れる方も多いと思いますが、あまり悲しんでばかりいると亡くなったペットのほうがよけい悲しむんじゃないかと思ってしまいます。だから逆に、お別れするときも楽しかったことを思い出してあげるほうが、その子にとってもいい。

むしろ思うのは、ペットより自分が先に逝ってしまうほうが可哀そうな気がします。私の飼っているリクガメなどは私よりも長生きしますし、オウムも50年くらい生きるので、もしものことがあったら、代わりにお世話をお願いできるようにそれぞれの行き先を決めています。

 結局、動物と関わるということは、その子を大切にするということと一緒に、次につなげるということも考えていかなければならないと思っていて、お別れするっていうことはその両方を考えることだと思うんですよ。

だから、私は保護犬も預かっていて愛情をもって生活しているんですが、新しい家族のもとにいくときには潔く、「いい家族が見つかったね」ってお渡ししています。あとは子猫など拾って面倒を見ることもあるのですが、猫コミュニティってすごくてすぐに飼ってくれる方が見つかるんです。ですからいま、うちには猫はいないんですよ。とにかく動物たちに対して、自分が見送れたらいいなという思いです。

山本:ただ可愛いと思って飼うだけではなく、その先までも考えている泉さんのところにいる動物は本当に幸せですね。私はいまの仕事をしていて、動物たちに思うことがあります。それは、たとえば犬や猫は人間と違ってたくさんの子どもを産みます。だから生まれ変わりも早いのではないかと思っているんです。不思議なのは、ツバメなどは親に教わったことがないのに、あれほど精巧な巣をつくることができる。これは生まれ変わりが早い遺伝子のなせる業なんかじゃないと思ってしまいます。もしかしたら、人間のように言葉もいらない世界なのかもしれません。

そう思うと、ペットが亡くなってお骨が手放せないという方もいるのですが、ずっと悲しむよりも早く土に返してあげて、早く生まれ変わってもらったほうがいいんじゃないかと思います。よく死を前にする猫が突然いなくなってしまったあと、その家に子猫がどこからともなく現れるという話がありますが、それも亡くなった猫が生まれ変わってその人の前にふたたび現れる生まれ変わりだと思います。

泉さんは動物たちの供養はどうされているのですか。

森氏:幸い家は土に返すことができてそこに埋めています。ただ、都内にいる友人もたくさんいるのですが、どこに埋めていいかわからないという人ばかりですね。昔は庭に埋めて供養するというのが普通でしたが、いまは庭も狭いし、埋めるとご近所さんから苦情になったりしますから。区や市の行政でペットの亡き骸を請け負ってくれますが、もう生き物ではなくゴミとして処分されてしまいます。飼い主からすれば家族同然なのに、これは悲しいですよね。飼ったら最期まで責任を取って飼ってあげることは大事ですが、埋葬の問題は残りますよね。


山本:私の家ではご近所から母がもらってきた猫を飼ったことがあるのですが、亡くなったとき庭の小さな松の木の下に埋めたんです。それがいまでは松が大きく生長しました。家を建て替えるということになったのですが、邪魔だと言われながらその松だけは切らずにそのままあります。あの松の木を見ると猫が眠っていることを思い出します。まさに樹木葬です。だからその松の木にも思い入れがあります。

とはいえ、やはり動物の埋葬の問題はあります。動物は死ぬとゴミ(廃棄物)として処分されます。かなり安い値段で処分するあるゴミ処理業者があったのですが、火葬せずに大量の遺体(注:一般的には人間の亡き骸を指しますが、尊厳の意を込めて遺体としています)を山に捨てていたんですね。そうしたら死臭がすごくて近隣からの苦情でそれが発覚したという事件もあるくらいです。

亡くなったペットを埋葬するペット霊園というものもありますが、ペット霊園には認可は必要ありません。ですから誰でもできてしまうんですね。しかし、儲からないといって急に閉鎖してしまったり、お墓の購入者ともめたりすることも後を絶ちません。実際にペット霊園に関しては関西ではほとんど流行っていないというのが現状です。やはり人間のお墓とは大きく違います。
森氏:もうモラルの問題ですよね。人間も動物も同じですが、一緒に生きてきた思い出の場所があるって大切なことだと思います。私はお墓に行っても、悲しむよりも楽しかったことを思い出す場所でありたいと思いますし、儲からないからメンテナス費用のために木を切って、草も砂利やコンクリートにしてしまってと、もうお墓も癒しの場所ではなくなっているところが多くなってしまいました。

 私は動物も好きですが植物も大好きで、家はジャングルみたいになっていますよ。私がジャングルエリアと呼んでいるリビングには、モンステラやパキラ、葉っぱが大きめなのがめずらしいフィカス、空気を浄化してくれるということで、いまではお店などのインテリアとして流行っているサンスベリアなど、20種類以上の植物を育てています。

とくにサボテンの種類は多くて、柱サボテン、オレオケレウス、吹雪柱、パキポディウム・ラトリーなど、とげがすごかったり、ゴツゴツしていたり、ふわふわであったりと、サボテン1つとっても本当にさまざまです。

家の中にある植物も動物同様に環境を大切にしています。太陽と水は植物にとって重要ですが、家のいたるところに太陽ランプ(植物ランプ)を設置しています。あとは風も重要だということで、部屋の中に風がいきわたるようにサーキュレーターも置いて、乾燥させてから水をあげるようにしています。

こうした環境を整えてあげると、とにかく植物の生長が早いので、よけいジャングルのようになってしまいますね。でも、そうした空間の中で生活していると、やっぱり気持ちが明るくなります。

それに家族恒例でやっていることもあるんですよ。それは植物の新しい葉や芽が生えているのを発見すると、みんなでハッピーバースデーの歌を歌うんです。そんなときは家族もハッピーになれるし、植物も生きているんだなって実感します。たくさんの動物や植物に囲まれている生活です。

 今回、山本社長とお話をさせていただいて思ったのは、社長の霊園にもめずらしい木があって、社長自身も楽しんでやっていらっしゃるのではないかと感じています。

山本:たしかに楽しんでやっていますよ。樹木葬ということでやっていますが、霊園を経営されている方は木にお金がかかると言って、ホームセンターで売っているどこにでもある小さな木をたくさん植えてしまうので、見たときにどうも感動がない。どうせお墓参りに来られるのであれば不思議な木がいっぱいあったほうが面白いと思って、世界中から木を集めて植えています。

 最初は永遠に生きるという意味で千年オリーブを樹木葬の中心にしましたが、霊園ごとに世界観も入れていこうと思っています。いま開発しているのが北の国の木、フィンランドや北海道の世界観です。

そこには白樺ではなく北海道のモミジやカエデを植えているのですが、めずらしいのは枝が白で、とてもきれいな色なんですよ。あとはポプラも植えています。山ならしといってポプラの葉が擦れてカシャカシャなるのですが、この音が亡くなられた方が「さようなら」「こんにちは」と言っているようで、このポプラゾーンを霊園の奥に位置させたりしています。

 また、オーストラリアでボトルツリーという木を見つけました。ブリスベンから2時間ほど車で行った先の原野に立っていて、その中から1本苦労して日本に持ってきました。リスクは高かったのですが、いまは植えて経過観察中といったところでしょうか。春に葉が開くかどうか。植物も生き物ですから、大切に育てて生長しる姿を見るとやはりうれしいですよね。

泉さんのお話をうかがっていて、動物も植物も楽しんで飼ったり育てたりすることで、人生を豊かにしてくれるのだということをあらためて感じました。

最後に、泉さんはこれからもたくさんの動物を飼われるのでしょうか。


森氏:いまはもうダメです(笑) ! その分、いまいる子たちを一生懸命、楽しんで可愛がります。
山本:本日は終始、泉さんの明るさと楽しいお話で、場の雰囲気も一気に華やかになりました。動物と植物を愛する泉さんのお話は、単に可愛がるだけではなく動物にいかに寄り添うかといった大変ためになるお話でもありました。

本日はありがとうございました。