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vol.7三輪谷光雄氏 × 山本一郎

三輪谷光雄氏 × 山本一郎

神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ
おもてなしとは、その人が良かれと思って、一生懸命に相手のために思ってやることなのです。
ホテルで新入社員がお客様にコーヒーを提供する時に、緊張で震えながらカップをガチャガチャするのも十分なおもてなしなのです。
「ホテルマンだからサービスを提供するときに震えながらやるのはダメだよ」と思うお客様は誰もいません。
一生懸命にやるとことにおもてなしの原点があります。

三輪谷光雄 氏

三輪谷光雄 氏の紹介

1949年 2月 大阪生まれ
1973年 3月 関西大学法学部卒業
1973年 4月 株式会社ロイヤルホテル入社
営業部長、宴会部長、宿泊部長、総支配人室長、
文化事業部長など、ほぼすべての部門長を歴任。
2004年 4月 株式会社ロイヤルホテル執行役員(兼 宴会部長)
2006年 4月 同 執行役員(兼 営業総本部 大阪営業本部営業一部長)
2008年 1月 リーガロイヤルホテル新居浜 総支配人
2010年 1月 リーガロイヤルホテル新居浜 代表取締役社長
2011年10月 株式会社ホテルニューアワジ入社
2011年12月 神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ 総支配人

山本:

弊社でお墓を建てていただいて、もう4年になりますね。
三輪谷さんのお墓に対するイメージや考えなどをお聞かせいただきたいのですが。

 

三輪谷氏:

実は先日、娘と4か所の墓参りに行ってきました。最初は大阪の南部に先祖のお墓がありまして、
そこから義理の父、妻の実家のお墓、そして最後は大阪の北部にあるお墓という具合に1日かけて北上して行きました。
ほぼ1日かけてのお墓参りでしたので、大変ハードなスケジュールでしたが、なかなか楽しいものでしたよ。
私らの世代は子供の時から、暑くてもお盆にはお墓参りに行かないといけないという教育を親やまわりの大人から教え込まれましたので
、お盆の時期にお墓参りに行かないとスッキリしないですよね。それは義務感とかいう事ではなく、お墓に行きますと気持ちが安らぐんですよね。

 

 

山本:

そのようなお声を弊社のお客様からよくお聞きしますね。先日対談させていただきました、
杉山芙沙子さん(元女子プロテニス選手 杉山愛さんの母親)も、「お墓参りを終えて帰ってくると清々しい気持ちになっている」と言っておられました。

 

三輪谷氏:

お墓というのは個人の心の拠り所だと思うのです。そういう場所を子供たちに作ってあげること、
形として残してあげることが親としての義務だと思っています。山本社長にはいいお墓を作って頂いたと思っております。

 

山本:

そう言って頂くことは本当に何よりです。
三輪谷さんはこの対談場所であります、神戸ベイシェラトンホテルと、ホテルニューアワジの総支配人でいらっしゃいまして、ホテル業界で長年、
お仕事をされている三輪谷さんにぜひお伺いしたいことがあります。それは、「おもてなし」について、ホテルマンとしての三輪谷さんのお考えをお聞かせ頂き、
勉強させて頂きたいと思います。

 

三輪谷氏:

まず、おもてなしの心とは、年齢を重ねるごとに変化していくものだと思います。
例えば、レストランで接客するホテルマンが、家族で来店されるお客様に対してサービスをおこなう時、そのホテルマンが、
独身の頃と結婚して子供を持つ頃の時と、さらに子供が大きくなってきた頃とでは対応する気持ちが違うのです。
「家族客が来た、子供にテーブルや床が汚される」と思うのが独身の頃の感性ですが、「子供とは汚すものだ」と、歳を重ねるごとに、
感性に幅が出来てきます。ホテルマンが経験するおもてなしの心とは、すべて自分の人生と繋がっているのです。

 

山本:

おもてなしの心の原点とはどういうものなのでしょうか。

 

三輪谷氏:

おもてなしの心の原点とは、私は母親にあると思うのです。私は7人兄弟で11人の大家族でした。
お盆や年末年始のご近所とのお付き合いや地域の行事事での母親の活躍ぶりや、家族で田舎の祖父母の家に帰省した時にも母親が中心となって動き、
そして祖父母が喜ぶ顔を見たりしていると、私は家族の中心に母親の大きな存在があることに気づきました。
私は、おもてなしの心の原点は母親にあるのではないかと、今この歳になってより強く思っています。

 

山本:

母親の存在はやはり大きいですよね。母親の包容力とでも言うのでしょうか。
このおもてなしの心の原点を今のお仕事で何か取り入れていることがあれば教えて頂きたいのですが。

 

三輪谷氏:

ホテルマンとはサービスのエッセンスが詰まっているのではないかと思われていますので、
他の業種から、「うちの社員を1カ月、ホテルで研修してくれないか?」と依頼されることが過去に多々ありましたし、
私は、京都のとある病院でサービスのコーチをやらせていただいたこともありました。しかし、私の教えたことは一般的な常識しか教えませんでした。

 

おもてなしとは、その人が良かれと思って、一生懸命に相手のために思ってやることなのです。
ホテルで新入社員がお客様にコーヒーを提供する時に、緊張で震えながらカップをガチャガチャするのも十分なおもてなしなのです。
「ホテルマンだからサービスを提供するときに震えながらやるのはダメだよ」と思うお客様は誰もいません。
一生懸命にやるとことにおもてなしの原点があります。逆に惰性で仕事をすると弊害がおこり、お客様から苦情が起こってくるものです。

 

山本:

三輪谷さんはホテルの支配人として、ホテルマンを採用、育成される立場でもあられますが、
どのような方をホテルマンとして採用、育成されたいのですか。

 

三輪谷氏:

採用にあたり、私は直接面接に携わっておりまして、「この人は感性があるかなぁ」と見極めた上で判断をしています。
実はホテルマンの仕事とは感性の割合が90%で、残りが仕事としての英会話や挨拶などの作法を教えていくのですが、その割合は全体のたった10%だけなのです。逆に言いますと90%は面接段階で決まっているのです。
だから感性をたくさん持っている人を採用して訓練すれば、立派なホテルマンとして活躍できるのです。

 

山本:

おもてなしの心で仕事をする場合、感性90%というのは、その人本来の感性が非常に大事なのですね。

 

三輪谷氏:

残りの10%に指導の全力を尽くさないと良いホテルマンに育てることができません。
私たちの仕事はお客様の心の奥に入って、お客様の望まれる事を意図的にくみ取る事をプロとしておこなっている訳であります。
私はこの仕事をして四十数年になりますが、実はお付き合いしたお客様の半数近くは大変お叱りを受けたお客様なのです。
今では「雨降って地固まる」になりましたが、お叱りを受けた時に、お客様は「この人は私の苦情を本当に対応してくれているのか」と
いうことを考えておられました。そういうことで、口先だけで対応することはお客様にはありありと分かってしまいますので、
失敗も経験を積んで克服していかなくてはなりませんが、感性がなければ克服することができないのです。

 

山本:

なるほど。大変な苦労をされてきた訳ですね。

 

三輪谷氏:

若い頃は、お客様を喜ばそうと、お客様の趣味、趣向から何から何まで手帳に書き出す事をしていました。
その努力の結果は、おもてなしの心のトレーニングをしていた訳だったのです。

 

山本:

手帳に書くという行動も感性ですよね。私の会社でも、
おもてなしやホスピタリティーある対応をもってお客様と接していかなければならないと、重点的に取り組んでおりますが、
お客様に対して何が一番大切なことなのか、お話ししていただけないでしょうか。

 

 

三輪谷氏:

お客様の心をどれだけくみ取れるかということが一番大事ではないでしょうか。
例えば、テーブルサービスの時にお客様のテーブルから「今日は誕生日おめでとう」という会話が聞こえた時に、デザートと一緒にケーキを誕生日の方にお渡しすることが、トップクラスのサービスを提供できるのです。
今、台湾のホテル経営者が、日本の旅館サービスの良さを感じ取って、ホテルサービスに取り組むことをしているのだそうです。
ただ食べて寝るだけのサービスだけではなく、一味違った密度の高い上質のサービスを提供できるところだけが、これからの時代は生き残っていくのではないでしょうか。

 

山本:

私たちの業界はお客様に何度も購入していただける商品ではありませんので、お客様の心をよくくみ取らなければ、
お客様にとって満足のいくサービスを提供できなくなるのですが、今までのお話しを聞かせていただき、
ホテルマンと私たちの業界とが全く関係がない訳ではなく、むしろホテルマンの感性を見習わなければならないことが良く解りました。

 

三輪谷氏:

例えば、某ハンバーガチェーン店でハンバーガーを50個注文したとしても、お決まりのマニュアルパターンで、「こちらでお召し上がりますか? お持ち帰りされますか?」としか対応してもらえないでしょうが、1個100円の商品なので、お客様の心の向こう側を読む必要はないのです。しかし、ホテルは違います。
ホテルはお客様の心の向こう側を読まないと商売にはならないのです。とあるエアラインが初めて国際線を飛ばした時にキャビンアテンダントが機長に「お客様をどのようにして、もてなしをすればいいのですか?」という質問したという話があるのですが、その機長は一言「お家でお父さん、お母さんにやっていることをそのままやっていればいいですよ」と返答したそうです。

当時の子供は朝起きたら親に挨拶をしたり、お客様が家に来られるとなれば、きれいに掃除をして玄関先に水を撒いたりしていましたからね。
もてなしの心の原点はお家にあったのです。あくまでも当時の話なのですけどね。

 

山本:

当時の子供はそれが当たり前だったのですよね。今どき、そのような家庭はどちらかというと珍しいですよね。
私が親しくしている少年ラグビーを指導している先生がいらっしゃるのですが、その先生の指導しているチームが日本一になられたそうです。
その先生と子供の教育論についていろいろと話をする事があったのですが、その時に、「今も昔も子供は変わっていなくて、変わったのは親の方だ」
と言っておられたことがとても印象的でした。

 

三輪谷氏:

親の方が変わりましたね。今どきの親は余りにも下手な理論武装をしてしまいます。
大学を卒業してホテルに入社をしてくる新卒の方が、ホテルでの仕事に対する理想と現実とのギャップに悩まされ、その事を家庭で両親に話をするのですが、親の反応が2パターンありまして、

「それが仕事やろ」と言われる親と、「そんな辛い仕事をさせるために大学まで行かせた訳ではない」と言われる親とがいるのです。

今どきの若い方は「良いホテルマンになりたい」と目的意識がハッキリとしていて立派なのですが、現実の辛さに耐えられなく、理想とのギャップが大きすぎて、すぐに挫折してしまい、持ちこたえられないのです。これはいわゆる肉食系でも草食系でも一緒なのです。
私は採用の面接に立ち会うのですが、その時に入社したい動機などをお聞きすると大変立派な事を言われてとても感心をするのですが、
「この子なら採用」と思う方が、実際の仕事に就きだすとたちまちに挫折をするのです。

 

山本:

思っている現実が自分にとって都合のよい現実に作り上げているのではないでしょうか。

 

三輪谷氏:

こういう方たちにも、おもてなしの心を仕事に取り入れてもらわなければならないのですが、
おもてなしの心を説くということはまだまだ早いのです。小学生に大学の授業を教えこましたり、六法全書を勉強させたりするようなものなのです。
しかし、面接の時は六法全書をすべて暗記したかのような立派な話をされるのです。

 

山本:

おもてなしの文化というのは日本だけにしかなくて、見えにくいものだと思うのですが、
最後に三輪谷さんの思う、おもてなしの心の教え方をお伺いできないでしょうか。

 

三輪谷氏:

「人をおもてなす」という原点がどこにあるかというと、
やはり各家庭の母親のかけ引きが無く利害関係のない、温かい姿だと思うのです。
子供の時からその様子を体で感じていれば、自然と出てくるものなのです。
スタッフを指導していくにあたり、おもてなしの心を体感的に一つずつ順番に教えていかなければならないことだと思っています。

 

山本:

今回のお話は大変勉強になりました。本日はお忙しい中、誠にありがとうございました。

 

 

 

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