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お墓のイメージは変えられる?大学の最新研究から見えた、常識を覆す5つの真実

和墓

 

お墓や霊園と聞くと、多くの人が少し暗く、静かで、どこか近寄りがたい場所を思い浮かべるかもしれません。「死」と直接結びつくため、どうしてもネガティブなステレオタイプがつきまといます。しかし、こうした社会に深く根付いたイメージは、本当に変えることができないのでしょうか?

 

実は、ある大学の研究プロジェクトが、この問いに新たな光を当てています。お墓業界が直面する「社会的スティグマ(負の烙印)」をいかにして乗り越えるか、という課題を学術的な視点から分析したのです。その研究から見えてきたのは、私たちの常識を覆すような、驚くべき発見の数々でした。

 

この記事では、その研究成果から特にインパクトの大きい「5つの真実」を分かりやすく解説します。

1. 「驚き」だけでは人は動かない。
霊園契約の意外な決め手とは?

霊園

 

研究チームが最初に立てた仮説は、常識的なものでした。従来の「暗い、怖い」というイメージを覆す、公園のように明るく現代的な霊園を見れば、その「驚き」が顧客の心を動かし、即座の契約に繋がるだろう、というものです。

 

しかし、実際の購入者へのインタビュー調査の結果、この仮説は正しくないことが判明しました。即契約の真の決め手は、「驚き」ではなく、むしろ「合理性」と「実用性」だったのです。見学に来る前から顧客が抱えていた現実的な課題やニーズに、その霊園がどれだけ的確に応えられたかが重要でした。具体的には、以下のような点が決め手となっていました。

 

• 管理の手間がかからないこと: 永代供養が含まれている、掃除や手入れの負担が将来にわたって少ない、など。
• 子供に迷惑や負担をかけないこと: 宗教宗派を問わない、納骨できる人数が柔軟である、など。
• 現実的な利便性: 駐車場から墓地まで段差がない、家から通いやすい、駅やバス停から近いといった、過去の経験(例:山の上の墓への墓参りが大変だった)に基づく視点。

 

もちろん、景観の美しさといった「驚き」も付加価値にはなります。しかし、顧客がその場で契約を決断する最大の理由は、彼らがもともと持っていた合理的で実用的な条件を、その霊園が完璧に満たしていたからだったのです。

2. お墓業界を救うのは「婚活」?
社会を変える4ステップの法則

ウエディング

 

ある物事に対するネガティブなイメージを、社会全体でポジティブなものへと転換していくプロセスは、学術的に「脱スティグマ」と呼ばれています。研究チームは、この成功事例として「婚活ブーム」に注目しました。かつてはどこか後ろめたいイメージがあった「結婚相手探し」が、今や当たり前の活動になった背景には、社会の認識を巧みに変える戦略がありました。

 

そのプロセスは、以下の4つのステップに分解できます。

1. 問題化

まず、専門家(社会学者など)が「『自然な出会い』に頼るだけでは結婚が難しくなった」と、既存の状況を「問題」として提起します。

2. 関心付け

次に、その問題への解決策として「積極的な『婚活』という新しい活動」を提示し、社会の関心を集めます。

3. 取り込み

業界の「アウトサイダー」である実務家が、本人証明の義務付けやIT技術の導入といった革新的な仕組みで安全性と利便性の新たな基準を確立し、他の企業もそれに追随します。

4. 動員

最後に、様々なロジックを用いて、多様な人々や組織を巻き込んでいきます。特に重要なのが、最後の「動員」で使われた3つのロジックです。

• ソーシャルロジック:

「少子化対策に繋がる」という社会的な善を掲げ、自治体などを巻き込む。

 

• ビジネスロジック:

顧客ニーズや利益追求を掲げ、様々な企業が参入する。

 

• 娯楽ロジック:

パーティーやイベントなど「楽しむもの」として位置づけ、消費者の心理的な抵抗感を下げる。

 

これらの異なるロジックが相互に作用しあうことで、「婚活」は社会全体を巻き込む大きなムーブメントになりました。この4ステップの法則は、お墓のイメージを変える上でも非常に強力なモデルとなり得るのです。

3. 接触は逆効果?偏見をなくす「4つの条件」

キャンプファイヤー

 

「知らないから偏見が生まれる。ならば、もっと接触の機会を増やせばいい」これは一見、正しそうに思えます。しかし、社会心理学の研究は、単純な接触は偏見の解消に繋がらないばかりか、かえって対立を深める危険性さえあることを示しています。

 

その有名な例が、シェリフという心理学者が1961年に行った「サマーキャンプ実験」です。実験では、キャンプに参加した少年たちを2つのグループに分けました。当初、ただ接触させるだけでは、グループ間の対立は激しくなる一方でした。

 

では、偏見をなくす「本当に有効な接触」とは何でしょうか。研究によれば、それには以下の4つの条件が必要です。

1. 対等な地位: グループ間に上下関係がないこと。

2. 共通の目的: 両者が協力しなければ達成できない、共通の目標があること。

3. 協同: その目標達成のために、互いに協力し合うこと。

4. 制度的な支持: その協力関係を、権威ある第三者(法律や組織など)が支持していること。

 

これは、先の「婚活」の事例で見たような、単にイベントを開いて人々を集める「娯楽ロジック」だけでは不十分だということを示唆しています。成功のためには、その接触の「質」が問われるのです。

 

例えば、ただ霊園でコンサートを開くだけでなく、地域の様々なグループが協力して霊園内にコミュニティガーデンを作り、美化するという共通の目的のために協働する、といった仕掛けです。ネガティブなイメージを克服するには、緻密に設計された体験こそが求められます。

4. 若者の半数以上がお墓について話さない。
でも選ぶのは「昔ながらのお墓」

公営墓地

 

研究の一環で行われた15歳から28歳の若者150名を対象としたアンケート調査では、非常に興味深い結果がでました。

 

まず、若者のお墓に対する関心の低さが明らかになりました。「お墓や死について家族と話したことがほとんどない・まったくない」と答えた人は、合計で58%にものぼります。さらに、「お墓は不要で、購入したくもない」と考えている人も33.33%いました。

 

ところが、です。これほどお墓に対して無関心、あるいは否定的な若者たちに「もし自分が埋葬方法を選ぶとしたらどれがいいか」と尋ねたところ、驚くべきことに68%が昔ながらの「一般墓」を選択したのです。

 

これは、お墓というテーマが社会的なスティグマを帯びていることの現れかもしれません。普段は話題にしづらいため深く考える機会がなく、いざ問われると、最も無難で伝統的な選択肢に無意識に回帰してしまう。これは、次の章で見る「スティグマは社会が作る」という考え方を裏付ける、興味深いデータと言えるでしょう。

5. スティグマは「呪い」ではない。
社会が生み出した「関係性」である

イクメン

 

最後に、最も根源的な発見です。そもそも「スティグマ」とは何なのでしょうか。私たちは、お墓が持つ「暗い」「怖い」といったイメージは、そのものに内在する固定的な属性だと思いがちです。しかし、社会学者のアーヴィング・ゴッフマンは、それを否定します。

 

ゴッフマンは、「スティグマ」の概念は、個人の「属性」ではなく、「関係」の中で社会的に構築されると述べています。これはつまり、ある物事がネガティブであるかどうかは、その物自体が決定するのではなく、社会が作り出した「意味づけ」や「関係性」によって決まる、ということです。

 

身近な例が「イクメン」という言葉です。かつての日本では、父親が育児に積極的に参加することに対して、どこか否定的な視線が向けられる風潮がありました。しかし、「イクメン」というポジティブな言葉が生まれ、普及したことで、父親の育児参加は「格好いいこと」「望ましいこと」へとイメージが大きく転換しました。

 

この事実は、私たちに大きな希望を与えてくれます。もしスティグマが、社会が作り出した「関係性」に過ぎないのであれば、それはつまり、私たちの手で変えることができる、ということなのです。

結果と考察

長年にわたって築かれてきた固定観念を変えることは、決して簡単な挑戦ではありません。しかし、今回ご紹介した大学の研究は、それが不可能ではないことを示しています。人々の現実的なニーズを深く理解し、社会変革の巧みな戦略を応用し、そして何より「偏見」そのものの正体を捉え直すことに突破口があるようです。

 

私たちが当たり前だと思っている社会のイメージは、案外、私たちが思っている以上に変えることができるのかもしれません。

若者はお墓をどう考えている?15〜28歳への意識調査で見えた本音

今回は、株式会社西鶴と小沢ゼミとの共同プロジェクトで実施された「若年層の『墓』に関する思考調査」の結果をご紹介します。15歳から28歳の男女を対象にしたこのアンケートから、現代の若者がお墓や死に対してどのような考えを持っているのか、興味深い実態が見えてきました。

 

調査の概要

• アンケート名: 若年層の「墓」に関する思考調査
• 調査対象: 全国の15歳から28歳の男女
• サンプル数: 150名(1回目)、80名(2回目)
• 調査期間: 2024年10月1日、2024年10月7日
※この調査は、1回目と2回目の間に特定の資料を読んでもらい、考え方の変化を見る形式で行われました。

【結果と考察②】考えたい?考えたくない?死後への意識

一方で、自身の死後についてはどう考えているのでしょうか。

 

• 自分のお墓を含む死後について考えたい?
◦ 1回目の調査では52.67%が「はい」と回答。
◦ 資料を読んだ後の2回目の調査でも55%が「はい」と回答しており、半数以上の若者が自身の死後について考えることに関心があることが示されました。

 

• 家族とお墓について話し合いたい?
◦ 「はい」と答えたのは1回目で47.33%、2回目で45%と、こちらも半数近くにのぼります。

 

普段の関心は低くても、自身の将来に関わる問題として、死後について考えたり、家族と話したりすることの必要性は感じている人が多いようです。

【結果と考察③】お墓は必要?不要?意識の変化

今回の調査で最も興味深いのが、資料を読んだ後の意識の変化です。

 

• お墓は必要か、また購入したいか?
◦ 【1回目調査】
▪ 必要だと思う・購入したい: 27.33%
▪ 必要ではない・購入したいと思ったことはない: 33.33%

 

◦ 【2回目調査(資料閲覧後)】
▪ 必要だと思う・購入したい: 18.75%
▪ 必要ではない・購入したいと思ったことはない: 51.25%

 

注目すべきは、資料を読んだ後で「お墓は不要・購入したくない」と考える人の割合が大幅に増加した点です。これは、情報に触れることで、従来のお墓以外の多様な供養方法を知り、必ずしもお墓を持つ必要はないと考えるようになった人が増えた可能性を示唆しています。

【結果と考察④】お墓への気持ちと人気の埋葬方法

最後にお墓に対する現在の心情と、希望する埋葬方法を見てみましょう。

 

• お墓に対して現在抱いている心情は?
◦ 最も多かったのは「特に何も思わない」で40%でした。
◦ 次いで「漠然とした不安」(19.33%)、「漠然とはしているが前向きに考えている」(18.67%)と続きます。

 

• どんな埋葬方法がいい?
◦ 1回目・2回目の調査ともに、「一般墓」が最も多く、それぞれ68%、65%を占めました。
◦ 「納骨堂」(約15%)や「樹木葬」(10%)といった新しい形も選ばれていますが、依然として伝統的なお墓が根強い人気を持っていることがわかります。

 

「特に何も思わない」という回答が多いことは、裏を返せば、固定化されたネガティブなイメージだけでなく、これからポジティブなイメージを築いていくチャンスがあるとも捉えられます。

まとめ:若者の意識から見えるお墓の未来

今回のアンケートから、以下のことが見えてきました。

1. 若者の多くは普段お墓に関心がないが、半数以上は自身の死後について考えたいと思っている。
2. 情報提供をきっかけに、「お墓は不要」という考え方が強まる可能性がある。
3. 埋葬方法としてはまだ「一般墓」が主流だが、多様な選択肢も求められている。

 

お墓に対する考え方は、時代とともに変わりつつあります。若者の無関心層に対して、霊園を公園のように利用できるスペースとして提案したり、多様な供養の形を伝えたりすることで、お墓の持つ「負のイメージ」を払拭し、新たな価値を創造していくことが重要なのかもしれません。

 


【免責事項】 この記事は提供された資料に基づいて作成されています。引用されている数値は資料に記載のものです

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