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相続とは?~用語、複雑な流れを全て解説~

相続の基本

相続(そうぞく)・遺産(いさん)ってなに?

相続とはある人が亡くなったときに、その人の財産を、特定の人が引き継ぐことをいいます。その人の配偶者(はいぐうしゃ)や子供、親族が引き継ぐことができます。

 

○相続する財産には「プラスの財産」と、「マイナスの財産」があります。

「プラスの財産」

不動産…住宅、宅地、畑(農地)、貸地、店舗など。相続財産に占める割合が高いことも多いが、分割しづらいのでもめやすい。

借地権・地上権・定期借地権など…
家や土地の賃借権(借家権や借地権)。借り主が亡くなった時には、権利は相続され、賃貸借契約はそのまま有効に承継されます。
賃借権の相続に貸主の承諾は必要ありませんので、契約者の死亡を理由に立ち退きを要求されても応じる必要はありません。亡くなった方と同居していなくても、賃借権を相続する権利があります。

 

その他…

金融に関する財産:現金・預貯金・有価証券・小切手・株券・国債・社債・債権・貸付金・売掛金・手形債権など

動産:車・家財・骨董品・宝石・貴金属など

その他:株式・著作権・特許権・商標権・意匠権など

 

「マイナスの財産」(借金、負債、損害賠償責任など)

借入金・買掛金・手形債務・振出小切手など、支払わなければならないもの。

 

相続税(そうぞくぜい)とは?

相続税とは、亡くなった人から、上記のような財産等を受け継いだ場合に、その受け取った財産等にかかる税金になります。

相続税は国へ行きます。相続した財産が多いほど税金も高くなりますので、資産を再分配するという役割もあります。

相続税は必ずかかるわけではありません。

 

以下の場合には相続税はかかりません。

相続税の基礎控除額(きそこうじょがく)=3,000万円+600万円×法定相続人(ほうていそうぞくにん)の数

つまり最低3,600万までは、かかりません。

ほとんどの人が支払うことはないそうです。支払う人は全体の8%程度と言われています。

 

相続税がかかる場合には税率は金額によって変わってきます。

 

1,000万円以下

10%

1,000万円超~3,000万円以下

15%

50万円

3,000万円超~5,000万円以下

20%

200万円

5,000万円超~1億円以下

30%

700万円

1億円超~2億円以下

40%

1,700万円

2億円超~3億円以下

45%

2,700万円

3億円超~6億円以下

50%

4,200万円

6億円超~

55%

7,200万円

 

相続っていつするの?

相続は、その人が死亡した日から始まります。正確には「死亡診断書」や「死体検案書」に書かれた「死亡日」が正式なものになります。
役所へ死亡届を提出すると戸籍(除籍)に「死亡日」が載るので、相続開始日を知りたい場合には戸籍を取ると良いです。

 

また、相続税の申告の期間は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月」となっています。

ですので、必ずしも死亡日と一致するわけではありません。

どうやって振り分けるの?

では遺産はどうやって各人に振り分けるのでしょうか?相続の仕方には何種類か方法があります。

法定相続

民法で決められた人が決められた分だけもらいます。民法に割合が定められていますので、それに従って誰にいくら分配するかを決めます。遺言書が無い場合にはこの方法に従い割合を決めていきます。

遺言相続

亡くなった人が遺した遺言書により、相続の割合を決め相続します。遺言書がある場合には原則この遺言書に従って相続します。

まずは遺言書があるのかどうかを確認する必要があります。

分割協議(ぶんかつきょうぎ)による相続

  • 相続できる人全員で協議して遺産の分割方法を決める方法。
    協議をする場合には必ず相続できる人全員で話し合わなければなりません。

 

誰がもらえるの?

では相続できる人は誰になるのでしょうか?

法定相続人という人と、受遺者(じゅいしゃ)という人になります。

 

  • ・法定相続人…民法で決められた人。亡くなった人の配偶者や、子、親、兄弟姉妹、甥姪等
  •  配偶者は常に法定相続人となります。ただし事実婚、内縁関係は法定相続人ではありません。
  • ・受遺者……遺言書で指定された、この人に受け継ぎますと決められた人。

優先順位

相続には順位が決まっています。配偶者は常に法定相続人となるので、その次以降の話になります。

 

・第一順位…子(子が亡くなっている場合孫など代々)

・第二順位…直系尊属(父母、父母が亡くなっている場合祖父母など)

・第三順位…兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合、甥姪など)

 

 

未成年はもらえるの?

未成年が相続する場合には、「代理人(だいりにん)」を立てる必要があります

通常は親がなりますが、親も相続する人の一人である場合、なれないことがあります。「利益相反関係」というものになるからです。親と子供ではお互いの利益が衝突する可能性があるということになります。

その場合には、「特別代理人」の選任を家庭裁判所に申し立てなければなりません。

代理人は未成年者の代わりに、遺産分割協議に参加したり、手続書類の記入・捺印等を行います。

相続したくない時にはどうしたらいいの?

相続はプラスの財産だけではなく、マイナスの財産も引き継ぐため、相続したくないという場合には、遺産を一切引き継がないということができます

その場合には相続を放棄するというものになります。

しかし、マイナスの財産だけ放棄するということはできません。全てを放棄するという形になります。

期間も決まっており、「相続が開始したことを知った時から三ヶ月以内」であれば放棄することができます。

遺言書について

遺言書(ゆいごんしょ)とはどういうもの?

遺言書はなんでも指定できるのではなく、「財産」に関する内容だけ、誰に振り分けるかなどを指定することができます。

ですので、死後の手続きを誰々にしてもらいたい、自分の遺骨はこうしてほしいなどは指定することが出来ません。

 

遺言書は自分の死後、自分の財産を誰に、どれだけ渡すかを書くことができます。

世間では数百万の単位の遺産で相続を争うことが多いので、少しでもある場合には備えておくと安心です。

遺言書の種類

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります。ここでは「自筆証書遺言」「公正証書遺言」についてご紹介します。

自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)

自身で手書きで書く遺言書です。代筆はできません。すべて自分で書かなければなりません。

ただし、現在は財産目録(ざいさんもくろく)のみパソコンで作成することができます。ただしその場合でもすべてのページに署名と捺印をしておかなければなりません。

※財産目録…どこに何がどれだけあるかを示しておくもの。

 

また、以下の条件がそろっていなければその遺言書は無効になります。

・作成した日付が記載されている(自筆)

・遺言者の署名(基本は本名、自筆)

・捺印(認印も可)

 

※注意点

・自筆証書遺言は作成しやすいが、もめやすい。作成時点で遺言能力があったのか、字が読めない、本人の自著と認めてもらえない…など。

 

公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)

次に、公正証書遺言ですが、一般的にはこちらを準備しておく方が多いです。

では、公正証書遺言はどうやって作るのでしょうか?

まずは、行政書士や司法書士、弁護士に相談されるのが良いかと思います。

 

流れ

・まずは何を誰に相続するか決める。原案を作る。

・証人を用意する。2人、友人や知人などに頼むこともできます。財産を受け継ぐ予定の人など、近しい親族は証人に指定することはできません。証人の手配が難しい場合は、公証役場で紹介してもらえる。

・必要書類を準備する。各役所によって異なる。

・公証役場で公正証書遺言を作成する。公証役場では公証人がパソコンで作成する。遺言を残す人はこれで間違いがないか確認して署名と捺印をする。

 

○公証役場(こうしょうやくば)とは

公正証書の作成、私文書の認証、確定日付の付与等を行う、法務省管轄の役所

ある程度の人口の規模の都市では公証役場がありますが、農村部などでは都市部まで行かなければならないこともあります。

○公証人(こうしょうにん)とは

裁判官や検察官などの法律の実務を長年やってきた経験がある準国家公務員。公募の中から、法務大臣が任命している。

 

公正証書遺言の良いところは、自筆の必要がないこと、改ざん等の心配がなく疑われにくいこと、無効にならないことです。

ただ、費用がかかること(財産の量による、公証役場でかかる費用は5,000円~、また専門家に頼むのであれば依頼費用)、証人が必要になります。証人へも1万円前後の謝礼が必要です。

遺言書がある時とない時で行動が分かれる

この遺言書がある場合と無い場合では亡くなった後の相続についての動きが変わってきます。

遺言書がある時

原則、遺言書に従って相続を実行します。

ただし、相続人全員から承諾が取れれば遺言書とは違う分割をすることができます。

 

しかし、亡くなった人はきちんと遺言が実行されるのか見ることはできません。

ですので、遺言書の中で、責任を持って遺言をする「遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)」を指定することができます。

もし「遺言執行者」が指定されていなかった場合には家庭裁判所に相続人と利害関係のない遺言執行者を選んでもらうことができます。

必ず遺言執行者を立てなければならないというわけではありません。

 

また、遺言書が見つかった場合、勝手に開けてはいけません。

勝手に開けたとなると、改ざんしたと疑われてしまう可能性があるからです。

 

見つけた場合には、家庭裁判所で「検認(けんにん)」という手続きをする必要があります。

有効か無効を判断するものではなく、未開封かどうかを判別し、隠蔽(いんぺい)・改ざんを防ぐために行います。

検認が済むと「遺言書検認済証明書(ゆいごんしょけんにんずみしょうめいしょ)」というものが発行されます。期間は1~2か月ほどかかるので、速やかに行いましょう。

必要書類は各裁判所によって異なります。

 

上述の「公正証書遺言」でしたら、この作業は必要ありません。

 

2020年7月から法務局に自筆証書遺言を保管してもらう制度ができました。この制度を利用する場合には、改ざんの心配がないため、検認は不要です。

 

遺言書がない時

では遺言書がない時にはどうしたらいいのでしょうか。

 

まずは財産目録を作成する必要があります。

どこにどれだけの財産があるかをリストアップします。

後から新たに遺産があることが分かった場合再度分割しなければならないので、先に全て調べておく必要があります。

 

次に財産を誰にどれだけ分けるかを確定させます。

誰が相続人にあたるのかを確定する必要があります。(配偶者、子、親、兄弟姉妹等)

どれだけ相続するかは、相続の方法が、「法定相続」か「分割協議による相続」かによって分かれます。

「法定相続」の場合には前述のとおり、法律で定められている相続できる人に決められている割合で相続をします。

分割協議を行う場合は協議をして、相続割合を決めます。

 

遺産分割協議

話し合いで分割をどうするかを決めるとなった場合は、「遺産分割協議」という話し合いになります。

遺産分割協議ってどうやってするの?

同順位の人が複数いる場合は、人数でその相続分を割ります。

例:配偶者と子2人→配偶者が1/2、子は1/2をさらに均等に分割する。

 

特別に協議の仕方に方法があるわけではありません。

しかし、話し合いは必ず相続人全員で行うこと、結果は必ず書類に残しておくことが必要です。

口約束では後から揉める可能性も出てきます。

 

書類を作成する際には、

・「遺産分割協議書」であることが分かるタイトルにすること

・手書き、パソコン、どちらの作成でもOK

・誰がどれをどれだけ相続したのかを示す

・実際に引き継ぐものの財産を正式に記録する。不動産については登記簿謄本をもとに正式に記入する

・日付

・相続人全員が署名、捺印する

以上のことが必要です。

 

書類を作成し、すべての相続人の同意のもと財産の割り振りが決まったら実際に相続を実行します。

 

遺産分割の実行の仕方

遺産を実際に割り振る際には実際どのように行動したらよいのでしょうか?

 

・現物で割り振る

遺産を物理的に分割します。現金などを分けたり、土地を分筆して分けます。

 

 

相続の事を簡単にするにはどうしたらいい?

ここまで相続のお話をしましたが、複雑だと感じられたり、自分が死んだときにはどうなるんだろう、と感じられる方も多いと思います。

そこで現在自分自身に万が一があった時の不安を解消できるとして、「見守り契約」という選択をされる方も増えてきております。

3つの不安を解消する見守り契約

・健康の不安…もし体が不自由になったら、、もし認知症になったら、、

・経済の不安…介護費、医療費で老後資金が心配、、お金の管理はだれがしてくれるのか、、

・孤独の不安…配偶者が先に死んでしまったら、、1人きりの時に倒れたら、、子供が遠方ですぐに来れない、、

 

こういった不安は遺言書ではカバーできません。

亡くなった後のことだけでなく、お元気な段階のことからカバーしてくれます。

見守り契約は具体的に何をしてくれるのか

サービス会社により内容はそれぞれですが、基本的には以下の内容が含まれていることが多いです。

・入院や住宅でも身元保証人、その際の連帯保証人、緊急連絡先の引き受け

・定期的な連絡、生活状況を確認

・手術時の立会い、緊急の医療同意、入退院時の支援等任意後見契約

・倒れて意識を失う等、緊急事態が発生した際に駆けつけてくれる

・遺体の引き取り、葬儀、火葬、納骨のサポート

・亡くなった後の諸々の手続き、死後事務

・病気や事故などで体が不自由になった場合の預貯金の管理や手続き

・尊厳死宣言書、医療のための事前指示書を整備し、ご本人の意思を書面化する

・遺言書の実行

・死後事務委任…例:叔父が孤独死した。死亡診断書、死亡届などの書類、葬儀や火葬の手配、公共料金の停止、支払い、口座の停止、家の解約等

など。

 

初期費用と月々での定額の金額がかかることが多いです。

金額はサービスの内容によって異なります。

自分には何が必要か、よく吟味する必要があります。

 

私たち西鶴では一般社団法人ライフエンディング・ステージあさひさんと提携し、ご契約者向けに見守り契約のご紹介もしております。

 

お墓と相続

お墓に相続税はかかるの?

お墓に相続税はかかりません。

お墓はただの財産ではなく「祭祀財産(さいしざいさん)」というものになります。

「祭祀財産」にはその他に家系図や位牌、仏壇、遺骨も含まれます。

これらは、「祖先を祀るために必要な財産」とされており、通常の財産とは別になり相続税の課税対象にはなりません。

お墓は節税になる?

お墓は節税になるのかというと、生前にお墓を購入しておけば節税になります。

購入せずにお金のまま財産が残った場合、そこに税金がかかる可能性があります。

生前に購入しておけば上述の通り、祭祀財産というものになりますので、税金の対象になりません。

しかし、相続財産のお金の中からお墓のお金を捻出する場合には、何かしらの控除の対象となるわけではありません。

お墓の名義は当然ながら今生きている人でしか契約できません。

また、ローンで購入していた場合、完済せずに亡くなった時でも、ローンが無くなるということはありません。

 

まとめ

人はいつだれがどうなるか分かりません。いつ何が起こってもいいように準備しておくことが重要です。

「終活」という内容も多岐にわたりますが、自身の財産をどうするか、残された家族に負担をかけたくないという方も多いです。ご自身の場合何が当てはまるのか確認しながら進められるのが良いです。

やることが多く、どうしたらいいか分からない場合には弁護士、行政書士、司法書士などに相談されると良いでしょう。

 

執筆者:株式会社西鶴 代表取締役 山本一郎

 

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